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最終弁論ONE POINT➇ 「農地法20条の許可要件にことごとく違反」  ~第3部 第6章~

1966_zu 「農地は私の命と一緒なんです。その農地を取られるということは、農業をやめて死ねということです。私はそういう受け止め方をしました。ですから、そのようなことを、はい、わかりましたと、のむことではできません」
 ──第6章「解約処分は農地法20条に違反する」から 71頁

 第3部は、この市東孝雄さんの証言を引用して始めています。
 これまで第2部では、農地法違反のデパートのような空港会社に地権者としての資格はなく、農地解約(農地法20条)の申請者にはなれないことを明らかにしてきましたが、第3部では空港会社が主張する20条の要件(法を適用するための必要条件)という点でも、満たされておらず違憲・違法であることを述べています。

 空港会社があげる要件は以下の3点。
 ➀農地を農地以外のものにするための具体的な転用計画があること
 ➁計画に確実性があり、転用許可が十分に見込まれること
 ➂賃借人の経営、生計の状況ならびに離作補償条件
 冒頭の証言からの引用は、小作耕作の農業経営と生活を困窮させる許可処分の違法性と犯罪性を突き出すためのものでした。
 ▼図:空港予定地周辺図(1966年閣議決定時)

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Iten  空港会社は上記の3点を要件にあげた上で、いずれも満たされているので適法だと主張している。しかし詳しく見ればみるほど、要件にことごとく反していることを、第6章は明らかにしている。
1.小作人の農業経営と生活の困窮
 市東さんの全耕作地に占める解約農地の割合はじつに66%。しかもその畑は生産性が高く自宅に近くて利便性が良く、取り上げは廃業させることを意味するSouon_2
 農業を続けることを困難にする解約処分は、農地法の規定に反することから違法。「農地を返還することによって生計が多少は悪化することはやむをえないとしても、そのために困窮に陥るようなときは、返還は許されない」(加藤一郎「農地法」201頁)

2.そもそもの空港計画(転用計画)の違法性と破綻
 農業適地を破壊する位置決定の誤り、それがもたらした地元農民によるかつてない反対闘争、1500戸にのぼる農家の移転、騒音被害の広域化と24時間運用の動き、──これらの結果、空港用地の取得は暗礁にのりあげ、1989年には事業認定が期限切れ失効し、1993年に空港公団は収用裁決申請を取り下げた。この時点で転用計画としての公共事業そのものが破たんしている。

3.適正な手続きのもとでは、転用許可の見込みもなかった
 農地法は、転用事業について、おおむね1年以内に転用目的に供されると認められない場合」は許可できない(4条、5条)ことを定め、許可した場合でも許可の取消処分を行うべきことを定めている(83条の2)。
 1988年の買収から15年間、転用できなかったばかりか、農地として転貸していた事実のなかに、「転用許可の見込み」もなかったことが証明されている。
 また、すでに明らかなように「小作人の同意」を得る見通しもなかったのであって、農地法に正しく従うなら、とうてい転用許可が見込めるものではなかった。
 さらに空港会社が主張する、「2500メートル化計画のための緊急性」も存在しなかった。

 第6章は、移転地域や騒音地域の詳細なデータや、小作地取得についての農林省通達(1970年6月5日付)などの新たな資料をもとに、これらを展開している。
 要件論に対するさらに立ち入った展開が、7~9章で行われることになる。

 ▼表上:成田空港による移転戸数と土地面積(2012年10月末時点)
    下:騒音被害地域 75W~80W (2012年10月末時点)

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