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最終弁論ONE POINT➈  「そもそも農地転用のための事業計画が違憲・違法」  ~第3部 第7章~

Kitaenshin 「農地法20条の本件解約許可申請は2006年7月3日になされ、その1週間後の同年7月10日にB´暫定滑走路を北側に320メートル延伸し2500メートル化する変更許可申請がなされているが、この2つの処分の関係について、原告成田空港は密接不可分なものとして主張している。・・・・・・・
 しかし、2006年成田空港施設の変更許可処分は、違憲・違法な処分であり、本件解約許可の理由にはならない。以下、詳述する」
 ──第7章「農地転用事業の違法性」から 88~89頁

 前回紹介したように、空港会社は農地解約のための要件を3点あげ、いずれも満たしていると主張しています。
①農地を農地以外のものにするための具体的な転用計画があること、②計画に確実性があり、転用許可が十分に見込まれること、③賃借人の経営、生計にの状況ならびに離作補償条件

 第7章では、空港会社がよってたつ事業計画(暫定滑走路北延伸と誘導路整備=2006年許可)の問題点を詳細に検討し、上記要件の①②の主張を、壊滅的と言えるほどにうち砕いています。
 ▼平行滑走路の当初計画と、暫定滑走路北延伸の関係図

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(1)転用計画の違法性

 私たちはさまざまな法の規制のもとで生きていますが、空港施設は航空法によって規制されており、その航空法は国際民間航空条約(シカゴ条約)の規定と付属書として採択された「国際標準及び勧告方式」に従うことを義務づけています。
 これは空港の最低限の安全基準というべきもので、成田空港と国はこれを遵守すべき義務を負っています。ところが、空港会社の事業計画(暫定滑走路と誘導路)は、場当たり的で違法なものであって、要件を満たしているなどとは、とても言えるものではありません。

1.着陸帯が基準の半分
 着陸帯とは、滑走路を囲む矩形のエリアのことで、緊急着陸時に危険を逃れるための保安区域。通常滑走路中心線から片側150メートル、合わせて300メートルの幅が標準だが、成田はその半分を確保するのがやっとだった。理由は未買収の用地(開拓組合道路と「へ」の字誘導路)による。

2.滑走路と誘導路が基準に反して近接している
 離隔距離違反。基準では、それぞれの中心線から182.5メートルの間隔をあける決まり。それを破っている部分が約600メートルあり、「へ」の字の湾曲部分では107メートルしかない。これらの違法の結果、接触事故が続発した。

3.管制塔から目視できない誘導路
 暫定滑走路の平行する誘導路の約3分の2が管制塔から見えません。モニターによる管制は条約と航空法に違反。

4.航空法が定める他人の利益の禁止義務に違反
 ア)騒音等による生活妨害・健康被害
   たとえば市東さん宅では、85~95ホンがいつものこと。低周波騒音も受けている。
 イ)村落共同体破壊
   東側誘導路建設によって東峰地区の入会地(東峰の森)が破壊された。
   地区が東西に分断され、生活道路・農耕用道路がつぶされ遠回りを強いられている。
 ウ)地元住民に生命・身体の危険をもたらしている
   暫定滑走路南端から120メートルのところに神社がある。
   南端から150~300メートルのところに民家、畑、鶏舎が点在。
   いずれも離陸後3分+着陸後8分の危険な8分(クリティカル・イレブン)地帯
 エ)これらの結果、航空機事故が続発
   ・2003年12月1日 航空機同士の接触事故
   ・2003年1月27日 着陸時のオーバーラン(東峰神社に激突寸前で停止)
   ・2004年6月16日 誘導路で航空機同士が鉢合わせ
   ・2009年2月28日 誘導路で航空機同士が鉢合わせ
 オ)2009年3月23日 A滑走路で貨物機が滑走路に激突・炎上・2名死亡
   成田空港特有の乱気流(ウインドシア:風向きや風速が急変)による。
   暫定滑走路でも状況は同じであり、もっと危険。
 カ)市東さんと地元住民は不安と恐怖、精神的圧迫を受けている

 さらに成田空港は、暫定滑走路北延伸を含めて、環境アセスメントを一度も行っておらず、環境影響評価法に違反している。また、成田空港は平時においても米軍・自衛隊が軍事使用しており憲法9条に違反している。
 そして、転用計画の違法性の最後に、2009~2010年度における暫定滑走路の運用実績をあげて、北延伸計画の必要性がまったくなかったことを明らかにしている。東側誘導路についても構造的欠陥から使い物にならず場当たり的な工事であったことを証明している。

(2)転用許可が見込まれるものではなかった事実

 第7章ではもう一つの要件論、転用計画の確実性と転用許可の見込みに対して、説得力ある反論を加えている。

1.なによりも地元住民と合意形成の破綻
 成田空港問題シンポジウムで当時の越智伊平運輸大臣は「B・C滑走路建設計画を白紙の状態に戻す・・・提案を・・・すべて受け入れる」(最終回:1993年4月27日)と表明した。
 この公約を破り、住民の合意を得られないままの計画は手続き的要件に反し確実性はない。
2.もともとの計画自体が破綻し、未完・欠陥が永続化
 成田の空港問題は、着工から半世紀近く、暫定開港から34年たってもなお完成できない。この空港は、計画に本来必要な合理性・妥当性・適切性が欠如しており、そのために、生活・生存基盤を守る大抵抗闘争との対峙を避けられないものにした。
 この完成できない計画はその出発点において、「あらかじめ刻印」されている。
 転用計画に確実性はなく、本来あるべき手続きと、法・規則に従えば、空港会社の掲げる要件さえも満たせず、転用許可がおりるはずのないものでした。

 第7章は、最後に、成田空港の「公共性」論に切り込み、農地・農業を守り抵抗する闘いの社会的意義を明らかにしている。
「国と空港会社・千葉県による農地取り上げは、経済学が解明した人間社会存立の原理と、この原理を根拠に要請される公共性維持の絶対的必要性に対立する反公共的・反社会的行為であり、筆者は到底認めることができない」(鎌倉孝夫鑑定意見書 47頁)
 ──この章の最後は、鎌倉孝夫氏(経済学博士、埼玉大学名誉教授)の鑑定意見書を引用して結んでいます。「反公共的・反社会的」な事業計画に、農地解約の要件を満たすものなどありようはずがないのです。

(鎌倉鑑定意見書はたいへん重要な論点を提起しており、農地法と小作権について論述した石原鑑定意見書とともに、ONE POINTの最後で紹介したいと思います)

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