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TPPに対抗するひとつの根拠地 ──大野和興さん シンポジウム報告⑤

_blog  市東さんの農地闘争の意義をぞれぞれの立場から語る前半、4人目は農業ジャーナリストの大野和興さん。大野さんは四国山脈の集落で育った原風景と秋田の公民館で見た詩編から独自の百姓観を語り始めました。

 「百姓は身の内にちっちゃな宇宙を持っている」──その宇宙とは土地であり土。何代にもわたって伝え続けてきた風土、自然、注ぎこまれてきた人々の汗や涙とか、そういうものが農地であって、それは単なる土地ではない。こうした土への思いが、『壊死する風景』(*)で語り合う三里塚の農村青年の言葉にすでにあったことを紹介しました。
 「公団、国家は何平米、何ヘクタールの土地に切り分けて、それを買収する、しないと言うが、俺らはそうじゃないよな。“農地死守”っていう時には、そんなふうに区切られるようなものではなくて、区切りのないところで農をしている。それを土というんだろうなあ」と本の最後のところでしゃべっているが、この歳(若さ)で、闘いによってここまで行き着いたんだなと、思ったといいます。

 そしてフィリピン、タイとブラジルにおける命がけの土地解放闘争を紹介。戦前戦中の小作争議を経て農地改革に至る日本もまったく同様だと話しました。
 「そうやって手に入れたものは農民的土地所有です。この土も土地も山も川も海も森も、本来は誰のものでもなく、みんなのもの。それが歴史経過によって私的所有権が発生して力ある者に集中した。それを農民のもとに取り戻したのは、じつは農民の闘いです。世界中で農民が土地解放のために闘ったし、今も闘っている」「市東さんの農地問題もそういうものとして捉えた方がいい」と訴えました。
 「農民的土地所有も私的所有ではないかというと確かにそうだが、“土地はみんなもの”ということを具体的に表現するのは、耕す者がその土地を持つ(農地法の耕作者主義)ことであり、百姓の営みあってこその農地」。
 そしてTPPについて、「農業の側からみると、その本質は百姓を土地から引きはがすところにある。市東さんの土地の問題はTPPの先取りであり、そのあとに来るのは“多国籍資本的土地所有”。農民を解体し土地から追放して、土地を多国籍企業のものにする。そこに残るものは、営利目的の企業農業であって百姓の農業ではない」。

 「このままではやられっぱなしであって、百姓的土地所有を基礎にすえた市民的土地利用によって対抗軸を立てる」
 「市東さんが有機農業で農作物をつくり、それを会員・消費者が分け合って食べる、全国でも拡がるこうしたあり方がTPPに対抗するひとつの根拠地になると思う。その意味でも、市東さんの農地裁判はとっても重要だ」と訴えました。

*『壊死する風景 ──三里塚農民の生とことば』(1970年 のら社)  2005年に創土社から復刻版が出されている

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