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〝執行は積み上げた人生と生きる意欲まで奪い取る〟  ──加瀬勉さんの証言  5・24請求異議裁判報告(3)

Photo_5  続いて加瀬勉さんが証言台に立った。加瀬さんは1934年に多古町牛尾で生まれた84歳。富里計画案の段階から地域住民の空港反対闘争に関わってきた。
 1970年、小泉よねさんの田畑、宅地が収用手続きの対象になると、その暮らしを守るために敷地の離れに住んでよねさんと一緒に田畑を耕した。
 1907年(明治40年)に農家の三女として生まれたよねさんは「家が貧しく7歳で子守奉公にだされた。洗濯、飯炊き、畑などあらゆることをやったが、一文字も習うことは許されなかった。19歳の時に東京に出て皿洗いや旅館で働き、23歳で千葉に戻って成田で働き、大木実さんと所帯を持って取香で生活するようになった。実さんが亡くなったあとは一人で暮らしていた。わずかな田畑と近くの畑仕事を手伝い、野草やドジョウ、ザリガニを採ったという。風邪を引けば、這っていって井戸の水を飲み、熱があれば食わずに寝る。置き薬もなければ、民生委員の世話もない。
 加瀬証人は、陳述書にもまとめた、よねさんから聞いた話を概括的に述べたあと、「本来、政治はこういう人を救うためのものだが、空港が決まると権力は徹底的に迫害した」と言って、次のように証言した。
「毎日2回、機動隊とガードマンがやってきて、よねさんに向かって罵声を浴びせた。〝糞婆でてゆけ〟〝早く死ね〟〝ごうつく婆〟。必死に抗議したが、ある日、あまりの悔しさに、よねさんは罵声を浴びせる機動隊に向かって、着物の裾をまくって性器をあらわにし、〝この婆が憎いなら股に警棒を差し込んで殺せ! お前らもここから生まれてきたんだぞ〟と叫んだ」
「ここまで追い込まれたよねさんを見て、人間の尊厳を冒涜する権力を絶対に許せない、見て見ぬふりはできないと思った」

・生きるための最低限を破壊した代執行
 1971年9月20日の強制代執行はだまし討ちだった。前日19日友納知事は翌日の代執行の中止を表明、反対同盟と支援は闘争体制を解いた。よねさんは収穫した稲の脱穀をすることにした。加瀬さんと石井武さんが手伝った。だが…
「朝の9時から作業を始めて一把こいて、ふと見ると高台に機動隊と作業班が見えた。代執行きたな、と思った。家を壊す大型機械が動きだし、入り口のところで何か文書を読み上げていたが脱穀機の音で聞こえない」
「機動隊がよねさんに手をかけ、うなりをあげる脱穀機から引き剥がそうとした。脱穀機はすごい勢いで回転していたのでとても危険だった。稲わらをつかんで抵抗するよねさんに向かって、突然、機動隊の一人が顔面を盾で水平に打ちつけた。前歯が折れ、よねさんは仰向けにたおれた」
「私はとっさに覆いかぶさったが、よねさんは気絶して黒目がなかった。掴みかかった機動隊はとっさに手を引っ込めたが、死んだと思ったに違いない」
「まもなく機動隊何人かで抱え上げ連れ出そうとしたが、よねさんは白い髪を振り乱し、恨みと怨念のすさまじい形相で機動隊を睨み返した」

 加瀬さんは執行現場の暴力をリアルに証言し、命の住処を奪われたよねさんと、反対同盟が東峰に作った仮住まいをみてこう思ったという。
「人間は飯が食えなかったら食えるようになろうと頑張るし、飯が食えるようになったら家を持とうと頑張る。次から次へと希望をもって生活を築いていく。ところが代執行後のよねの家は借り物だった。よね婆が汗して作ったものはなにもない。苦労して、汗を流して頑張って、蓄積してこそ誇りと自信が生まれるし、人間は絶望しないで生きられる。公団はよねさんの生存権の根本を破壊した。補償で何を償うというのか!」

 加瀬さんの証言は、小作と地主の関係と残存小作地、農地法の法目的から市東さんの農地問題に展開した。
「市東さんは地主との間で小作契約を結んでいた。遅滞なく地代を払い信義を犯したことは一度もない。他方で、地主・藤﨑は秘密裏に小作地を売り渡し、地主づらして15年間も地代を受け取っている、これは公団と結託した詐欺行為だ」
「空港建設は国家犯罪の集積。三里塚に司法の正義はなかった」と弾劾した。

 最後に裁判長に向かって、戦後の食糧難の時代に闇市で命をつなぐ庶民を、 「闇米食って裁けない」と言って餓死した山口判事の名をあげて、正義の裁きを行う姿勢を問いただした。そして、
「〝耕すものに土地を〟は普遍の原理」
「市東さんから、積み上げた歴史のすべてを奪う強制執行はやるべきでない」としめくくった。

 加瀬さんの証言で、よねさんを追い詰めた過酷な執行の状況が再現された。それは住処と田畑を破壊するにとどまらず、人としての尊厳を踏みにじり、それまで積み上げてきた人生と生きる意欲までも奪い取るものだということを教えている。
 小泉さんと加瀬さんの証言を受けて、来月、いよいよ市東さん本人と産直共同生産者の萩原富夫さんの証言が行われる。

Photo_3 〔写真上〕よねさんを組み伏す機動隊
〔左図〕加瀬さん作成の執行現場手書き図

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