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2018年10月

河北新報にも書評 ──「『亡国農政』を徹底批判」の見出しで

<東北の本棚>「亡国農政」を徹底批判

大地に生きる百姓 坂本進一郎 著

 食料自給率わずか38%、農村は人口流出に歯止めがかからず、中山間地は荒廃、「地方創生」はお題目ばかりだ。「自民党農政は、農業つぶしの亡国農政」-。秋田県大潟村に入植、間もなく半世紀になる著者の痛切な叫びである。
 著者は1941年、仙台市生まれ。東北大経済学部卒。北東公庫を退職して大潟村に入植したのが69年だ。稲作農家となるが、この時期から減反政策が本格化、青刈り、ヤミ米、農地明け渡し訴訟と混乱を極めた。猫の目農政を批判してきた「大地に生きる百姓」の1人である。
 成田空港問題、三里塚の農民の闘いに連帯を訴える。空港の誘導路の中に宅地と畑が囲まれ、土地収用を巡って裁判で闘っている農民が現在もいる。かつて成田空港問題は大きな社会問題としてクローズアップされたが、近頃はニュースにも出ない。もう終わってしまったのかと思うほどだが、「権力という暴力によって農地を取り上げる成田空港問題こそ、日本の農業問題の縮図だ」と訴える。
 親から子へ、子から孫へ、家族労働で守ってきた日本の伝統農業、本来は自給自足を基本にした。肥料は牛糞(ふん)、人糞を使い、馬耕で賄った。そんなにお金をかけるわけではない。「もうかる農業」を目指し、土地の流動化、大規模化を狙った近代化農法は結局、化学肥料や機械を購入する「お金を使う農業の仕組み」に変えていった。もうかったのは機械メーカーだけである。何でも米国にならって効率主義。果ては「安保条約で守ってやるから、日本は農産物を輸入せよ」とは「米国の押し売り商法」と厳しく批判する。
 戦後農政に対する批判は、これまでも多くの人々が語ってきた。しかしこの頃は、農山村を歩いても、語られる声さえ聞かれなくなった気がする。それだからこそ、著者の亡国農政を批判する言葉の意味は重い。
 社会評論社03(3814)3861=1944円。

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11・18シンポジウムのビラです!

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 今年のシンポジウムは格別です。請求異議12・20判決直前の11月18日に開催します。
 判決を待つのではなく、確信をもって判決を迎え撃つ構えのシンポジウムです。
 昨年、私たちは「憲法と農業、農民の人権」という斬新なテーマのシンポジウムを開催しました。それから一年、市東さんの裁判はこの問題を主張のベースとして進行し、論点が研ぎ澄まされ、新機軸も打ち立てられて結審を迎えました。
 この裁判で切り開かれた地平とは? その成果を明らかにして、勝利への確信を打ち立てるためのシンポジウムです。ぜひお越しください!

 2018年11月18日(日)
  *文京区民センター
    東京都文京区本郷4−15−14
    最寄駅:地下鉄:春日駅、後楽園駅、JR水道橋駅東口
  *開場13:15 開始13:30
  *資料代 500円

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日本農業新聞に書評  『大地に生きる百姓 ──農業つぶしの国策に抗って』

20181014_2 2018年10月14日付 『日本農業新聞』

『大地に生きる百姓 農業つぶしの国策に抗って』
坂本進一郎・著

 これまでの、そして「今」の農政への一百姓=農民の怒りの書である。「亡穀とは亡国なり」の叫びが胸に響く。
 副題「農業つぶしの国策に抗って」とあるが、本書冒頭で、国が農民の土地を取り上げる成田・三里塚闘争で、今なお当事者である市東孝雄さんの現状を挙げる。市東さんは千葉県成田市で三代続く農家。「民事強制執行」の名の下に、農地取り上げと言う緊迫の事態が迫っている。
 減反問題で揺れ動く秋田県大潟村で農業を営む著者は、米国の言いなりでなく、大企業本位ではない農政の確立を長年訴え続けてきた。安倍政権で一気に貿易自由化が進む中で、〈亡穀=亡国〉とは、土地利用型農業の危機感を端的に表す。序文では、中国の憂国詩人・屈原の話に触れる。
 豊富な歴史的知識をまぶした本書で、得心したのは「自由民権運動の伏流水 谷中村と秩父事件、三里塚」。日本初の公害問題・谷中村事件で先頭に立った、田中正造の国への怒りは、世紀を超え形を変え今も農民に受け継がれる。「人間の顔をした農業」を説く著者の思いは、農政の本質とは何かも問うているのだ。
(社会評論社 1800円+税)

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弁護団の最終弁論第2部  9・27請求異議裁判報告(3)

 第2部は、強制執行がまさに「権利濫用」であることの具体的展開である。
 ここの論点は便宜的に第1部からの通し番号なので、第5がその総論となった。傍聴していると、なぜ弁論の途中に「総論」が入るのかと思わされるが、ここから第2部が始まるのだった。

第5総論 本件強制執行権行使は、空港会社の「権利濫用」「信義則違反」だから裁判所は許可すべきではない
 1993年5月23日、第15回成田空港シンポジウムで、隅谷調査団は「平行滑走路の用地の取得のために、あらゆる意味で強制的手段が用いられてはならず、あくまでも話合いにより解決されなければならない」という最終所見を公表した。空港公団(現会社)、国、千葉県が全面的に受け入れることを公的に誓約した。
 ここに「強制執行権の放棄」もしくは「不執行の合意」が成立した。空港会社の強制執行権の行使の権利濫用は被告の公的誓約を裏切って強制されようとしているものであり権利濫用性は一層明確である。
 そして権利濫用の5つの類型を提示して、これにことごとく該当することを明らかにした。
 自己の以前の行為に矛盾・抵触する(最終意見遵守の公約破棄)
 過酷な執行(営農基盤の破壊と人生を奪う。よねさんとの類似性)
 加害目的の執行(見せしめ執行)
 社会正義に反する(生存的基本権、営農権など)
 不誠実な手段によって取得した権利の行使(秘密売買による所有権の移動など)

 この総論に続いて、権利濫用を明らかにする各論が展開された。
第6 市東さんの有機農業と産直型協同性を破壊し回復し難い損害を強制する
 ここでは、空港周辺地域で発生・発展してきた有機農業と市東さんたち三里塚産直の会のシステムと歴史が詳細に展開された。市東さんの農地と農業は長い年月と不断の努力によって作られたものであること、廃業の危機に瀕する日本の農家・農業の再生展望からしても潰してはならないことが、石原健二氏(農業経済学)の分析・意見を元に展開された。
 強制執行による有機農業と産直型協同性の破壊は、市東さんの人生そのものの否定であり、「へ」の字誘導路の手直し目的ということからしても著しく均衡を欠く超過酷執行であり権利濫用であって認めてはならないと結論づけた。

第7 憲法が保障する「営農権」「生存権的財産権」を侵害する過酷執行
 内藤光博教授(憲法学)が意見陳述した理論の実践適用である。まず1961年農業基本法前文における農業の社会的役割をふまえて、農業を営む権利としての「営農権」を憲法的人権に位置づけ、すでに定説となっている「生存権的財産権」としての農地をもうひとつの根拠として、市東さんの農業と農地の社会的意義と役割を明確にした。
 この営農権を奪う強制執行は、基本的人権としての「職業選択の自由」「勤労の権利および自由」さらに「個人の尊厳」の否定につながることを明らかにした。
 また、人の食料供給に不可欠な農業は、憲法前文の「欠乏からの自由」(平和的生存権)と25条生存権と深くかかわり、「憲法的価値」「憲法的公共性」を持つことを明確にして、市東さんの農業がその保障を強く受けるべきことを鮮明にした。

第8 小泉よねさん行政代執行と同様の見せしめ、かつ苛酷な執行
 ここでは、小泉英政・加瀬勉両証人の証言と、成田空港シンポジウムで上映された小川プロの未公開フィルム、北原鉱治反対同盟事務局長の著作から、よねさんの代執行の過酷執行性を浮き彫りにし、市東さんの強制執行との同質性を明らかにした。
 強制執行は執行される者の「全人格否定」であり「死刑宣告」を意味するものであって、何ものをもっても補償できないことを明らかにした。

第9 対象農地の収奪における権利濫用
 ここは第7と対をなす「営農権」の具体的論述である。収奪対象としての有機の農地が、いかなる労働の営為によって作られ維持されているかを詳述して、他に変えるものができないことを鮮明にした。有機農業と産直型協同性の形成とその社会的意義について明確にした。

第10 「への字」誘導路は、会社自ら計画変更し、国から安全性の許可を得たものであり、その解消を求めて強制執行を行うことは信義則に反する
 空港会社が強制執行の理由としている「へ」の字誘導路の解消(直線化)について、さまざまな角度から検討したうえで、以下、結論づけた。
 すなわち、空港会社は、用地問題を解決できず、当初計画を変更してB’滑走路と「へ」の字誘導路を計画し、「運用上支障なし」「安全」として国の認可を取り付けた。そして供用を開始して、騒音と事故の危険で追い出しを図ったが、叶わぬとなると、こんどは「空港機能の強化」をかかげて「へ」の字の解消へとふたたび計画変更して、農地を取り上げようとしている。ここに執行の本質がある。信義則に反して権利の濫用にあたり、到底認められない。

第11 成田空港の国際航空需要の著しく減少し公共性は認めらず、強制執行に必要性・緊急性はない
 鎌倉孝夫氏(経済学)の経済分析からの展開。旅客数と貨物取扱量のいずれもピークを打ち下落を続けており、運用実績は著しく低迷している。これによって余剰設備を抱えながらも、「空港の機能強化」を叫ぶのは、「成田空港の地位の低下」の現実にその根拠がある。
 いまや空港会社は本業の航空系収入ではなく、テナントやリテール事業に走って商業資本と化している。他方、空港騒音や周辺住民の生活破壊は「空港機能強化」によってさらに加速する。空港会社は利潤追求を行動原理として公共性を喪失している。
 人が平和のうちに生活・生存することこそがもっとも重要な人間的権利である。それを保障することは経済学の規定からしても憲法原理に照らしても最優先の公共目的である。成田空港は公共的に無価値であるばかりか、日々公共性を破壊している。

第12 南台の「GSE、ULD置場」は虚構の計画に基づくものであることは、いまや明白であり、強制執行は不必要かつ違法
 南台の空港告示区域外の土地に対する強制執行が、虚構の計画によるものであることは戸井健司(当時公団職員)証言で証明された。のみならず、ターミナルに隣接する取香地区にはその当時からGSE、ULDの大規模計画が存在し、すでにその建設工事は完成し供用されている。
 南田の転用計画は、千葉県知事から賃貸農地の解約許可処分を掠め取るための虚構であり、許可の騙し取りだった。これは明白に、権利濫用の類型(不誠実な手段によって取得した権利の行使)に該当する。
 強制執行の必要性・緊急性は、空港会社によって何ひとつ立証されていない。南台では正当な耕作地への工作妨害と破壊、天神峰では建物など営農手段の全てを破壊する。そうすることで生計の資を奪い、農民としての死を強制し野垂れ死にを強いる強制執行は悪質この上なく、加害意思、加害目的を伴う権利の濫用的行使であり、許容される余地はない。

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弁護団の最終弁論第1部  9・27請求異議裁判報告(2)

 最終弁論のために弁護団がまとめた準備書面は、231ページの分厚いものだが、それは大きく<2部= 12論点>で構成されている。
 第1部は、請求異議の提起の要件である口頭弁論終結後に発生した事態について。第2部は、強制執行がまさに権利濫用であることの具体的事由である。
 弁護団はこれらによって、市東さんに対する強制執行が、71年第二次強制代執行(小泉よねさん強制収用)と同質の過酷執行であり、空港会社の権利濫用であって社会正義に照らして許されず、執行停止を求めたのだ。
 今回は、第1部の4つの論点のポイントを掲載。

第1 執行段階で具体化した「強制的手段放棄の公約」
 口頭弁論終結後に発生したことで、弁護団が第1にあげたのは、「強制執行権の放棄ないし不執行の合意」の発生である。これは「強制的手段放棄の公約」のことだが、現実に意味を持つのは、実際に〝執行〟が具体化する段階に入ってからである。
 空港会社は「強制的手段の放棄」は1994年の円卓会議のことであって、口頭弁論終結後のことではないと弱々しく主張するが、その主張は打ち砕かれた。

第2 小泉よねさん問題の和解解決
 口頭弁論終結後に発生した第2の事実は、小泉よねさん問題の和解解決である。
 被告空港会社(空港公団)は、成田空港シンポジウムと円卓会議において「あらゆる意味において強制手段はとらない」ことを地元農家と日本社会に公約した。さらに、2003年には黒野総裁が東峰部落あて書簡で再度確認した。その後、よねさんに対する強制代執行(過酷執行)について、2015年5月21日に小泉英政さんとの間で和解が確定した。ここでも「よねさん問題のような不幸な出来事を繰り返さない」として「強制的手段の放棄」が確認された。これは2015年3月4日の口頭弁論終結後のことである。
 市東さんに対する強制執行は、これらの公約に反して信義則に反する権利濫用である。

第3 離作補償の不払い
 第3の事実は、離作補償不払いの事実。千葉県知事は、農地賃貸借の解約を許可するにあたって離作補償の支払いを条件とした。しかし、空港会社は珍妙な「二重払い論」(市東さんが明け渡さないうちに補償金を支払えば農業利益と補償金の両方を得ることになる)をたてにして支払おうとしない。口頭弁論終結から現在に至るまで支払わずにいるが、これは言わば、日々、不作為を更新しているのである。

第4 第3滑走路建設等の「空港機能強化策」
 口頭弁論終結後の第4の事実は、第3滑走路建設計画とB滑走路延伸計画(2016年9月27日提示)など「空港機能強化策」の新事実。さらに2017年7月15日には、オーバーランから東峰の集落にあわや激突寸前の重大インシデントを引き起こしている。「空港機能強化策」は市東さんを始め東峰地区や近隣住民の生活をさらに侵害する新事態であり、7・15の重大インシデントは、これまで懸念されたことが現実に発生したという点で、決定的な意味をもつ。

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