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2020年9月

10・22控訴審ビラができました 請求異議最終弁論

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「強制執行は農民としての人権を侵害する権利濫用。認めてはならない」 第3回請求異議控訴審 裁判報告(5)石原健二補佐人

 市東さんの証言に受けて、最後に石原補佐人が陳述した。
 石原補佐人は、全国農業協同組合中央会を経て大学で教鞭をとってきた。専門は農学で、農地と農業・食料問題を主な研究課題としてきた。その知見から、市東さんの請求を棄却した一審判決は「間違っている」と述べ、次のように陳述した。
「一審判決が犯している誤りの底には、農地 ・農業が持つ高い公共的意義への無知と軽視、小作農の権利に対する無理解と意図的とも言うべき否定的態度がある」

 そして四つの論点から、一審判決批判を展開した。

1)市東さんの有機農業と産直的協同性
 補佐人はまず、「完全無農薬」を実践する市東さんの有機農業を具体的に明らかにした。そしてその特質について
「市東さんは“農業は人の食べ物をつくる仕事だから、人に害を与えるものを作ってはならない”という信念のもとに自分の農業をやっている」
と食の安全・安心を第一とする市東さんの農業姿勢を述べた。
 そして、もう一つの特質として、産地直送の販売方法をとっていること、成田周辺から都心に及ぶその取り組みを「産直型協同性」として高く評価した。
「この産直方式には、大手資本の流通支配によって失われた、人と人との関係を回復するという意義がある」
「小規模農家を切り捨ててきた間違った農政とたたかって、本来あるべき日本の農業を取り戻し、生き抜こうとしている」
 そして、
「長年の農業問題に携わってきた経験から、新自由主義政策によって生まれた社会的格差を克服し、地球規模の環境破壊を食い止める道は、 “人の命を育む農業実践”にあると確信している」と陳述した。

2)今も変わらない、農地法による耕作者保護の強固な原則
 では、小作地を耕す農民の地位と権利はどのようなものなのか。
 一審判決は、市東さんの小作地を「権利の安定性に一定の限界がある借地」と書いている。農地を土地一般に解消し、小作耕作権を徹底的に弱め落としめた。
 市東さんは証言で、「たとえ小作だとしても耕す権利がある。『国策』だといってそれを奪うことに怒りを感じる」と強く抗議している。
 石原補佐人は、まず、日本の近代的土地所有の確立過程を詳しく話した。
「明治以降、敗戦まで、日本の農業は、経営規模の小さな自作農的土地所有制度を基底とし、地主と小作農を両極とする半封建的小作関係が支配した。この過小農制度と高率物納を基礎におく半封建的小作農制度こそ当時の日本農業の特性」
「“耕す者に土地を”の農地改革は、日本では敗戦と戦後民主主義によって現実化し、農地法に結実した。耕作者の地位の安定が歴史的に位置づけられた」
「農地法は、幾度かの法改正がなされてきたが、「小作農」とりわけ「残存小作」の保護条項の核心は変わっていない」といって、1970年代以降の列島改造と財界が求めてきた土地法制の改悪においても、耕作者の地位の安定をはかる機能は保持されていることを明らかにした。
 そして、一審判決が「権利の安定性に一定の限界がある借地」という間違った認定のもとで行なった損失補償について、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」に反するものであると指摘した。

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「私の畑のあの土でないと、私の野菜はできません」──第3回請求異議控訴審 裁判報告(4)市東孝雄さん本人尋問

 いよいよ市東孝雄さんの証言。浅野弁護士が尋問した。
 最初に、ゴールデンウイークでも発着98%減の状況を訪ねと、
「ほんとに静かでした。これが本来の姿だと感じました。鳥のさえずりや風の音、排ガスはなく、じつに気持ち良かったです」。
 7月22日に供用を再開しての状況については、
「格安航空のピーチとジェットスターが飛んでいるけど、前ほどのうるささでない。A滑走路で間に合うのじゃないかと思う。それでも使うのは嫌がらせじゃないかと思います」。
 空港会社の田村社長が6月29日の会見で「コロナは長く続くと覚悟している。しかし機能強化は着実に進めていく」と話したことについては、
「地元のことをまったく考えてない。今の状態でやれているのだから、第三滑走路もいらなし、機能強化は論外だと思う」。
 7月27日、騒音下住民が参議院議員会館で国交省と空港会社に対して、機能強化の撤回を求めたが、国は「需要減は中長期的には解消する」としてゆずらなかた。これについてどう思うか聞かれて、
「いくら住民がやめるように陳情しても結果ありき、『国策』だからやるという。この態度は54年前から変わっていない」と証言した。

●南台・天神峰の耕作地と産直出荷
 南台の農地の一部を「不法耕作」だと決めつけて明け渡しを求めている空港会社に対しては、「その場所(41−9番地)は一度も耕したことがない」と言って、写真撮影報告書をもとにして畑の様子と現在の被害を説明した。
 自宅と南台農地の間は、成田市が管理する約500メートルの直線道だった。一日120台の車が通行していたが、B’滑走路の誘導路建設で一方的に廃道にされた。このため、大きく迂回して交通量の激しい道を使って畑に行くことを強いられている。抗議した市東さんが不当逮捕されたことも証言した。
 さらに、取り上げ対象の天神峰農地を説明。ここには畑とともに作業場や倉庫、作付け会議などを行う別棟がある。育苗のためのビニールハウスがあり、写真には育苗ポットで発芽したブロッコリーとキャベツが写り、定植の時期を待つ様子が示された。
 「これらの設備は必須ですか」との問いに対して、「これらが無くては農業はできません」。
「家の至近にこれらの設備があるのはなぜか?」という問いには、「これらは畑と一体で、育苗の水やりや生育を見るためにも家の側にないとだめ」だと答えた。
 さらに尋問は、「三里塚産直の会」について。市東さんと萩原富夫さの2軒が生産者となって消費者と提携し信頼関係を築いている様子が伝わってきた。
「採れたばかりの旬の野菜を消費者のみなさんに食べてもらう。一年を通じて、50〜60品目を作る。それが歓び」だと答え、手間のかかる多品目生産も年間を通して消費者家族の野菜を賄うという産直の基本的な考え方に基づくものであることを明らかにした。
 消費者に届ける野菜ケースには「野菜だより」を入れ、そこには保存方法から調理のレシピが書かれており、きめ細かい提携関係が作られていることが明らかになった。

           ▶︎▶︎▶︎続きは追記のページでお読みください▶︎▶︎▶︎

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【上】天神峰農地の略図と畑の苦瓜 【下】南台の畑の全景

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9・14耕作権裁判は期日が取り消されました

9月14日(月)の耕作権裁判は期日が取り消されました。
南台の農地をめぐって航空写真の提出命令を申し立てましたが、2月5日に地裁で却下。東京高裁に即時抗告しましたが、まだ決定とならず、一件書類が高裁に上がったままで審理ができないからです。

なお、次回期日は12月21日の予定です。

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「黒を白と言いくるめる論法。事実と違う」──「強制的手段の放棄」を改ざんする空港会社の主張と一審高瀬判決を全面否定  第3回請求異議控訴審 裁判報告(3)平野靖識証人

 政府・空港公団(現空港会社)は、成田空港シンポジウムと円卓会議(1991年11月21日〜1994年10月11日)で、「強制的手段の放棄」を受け入れ、公式に表明した。
 この厳然たる事実を踏まえるなら、市東さんの農地に対して強制執行は許されない。窮地に立つ成田空港会社は、ここでいう「強制的手段」とは、「土地収用法や公共用地特別措置法に基づく用地の収用・取得のことであって、本件のような民事強制執行はこれにあたらない」という逃げ口上を展開した。
 果たしてそうか? シンポ・円卓会議のすべてに参加し関与した当事者に、真実を尋ねるのが平野証人への尋問。一審高瀬判決と多見谷判決(この裁判の基本事件の一審判決)における事実認定の誤りを糺すためにも重要証言である。

 まず平野さんが三里塚に常駐することになった経過、東峰地区に物産会社を設立し、地権者として成田空港シンポジウムと円卓会議にすべてに参加し関与した経過が、葉山弁護人の尋問で明らかにされた。
 また、小泉よねさんや市東孝雄さんの父・東市さんとの関係、とりわけ東市さんには物産会社の融資の連帯保証人になってもらうなど、信頼関係を示す事実の一端も明かされた。
 尋問は徐々に本題に入った。

●シンポ・円卓会議の参加条件と隅谷調査団の提言
 「強制的手段をとらない」ことは、なによりもシンポジウム(公開討論)に反対同盟(熱田派)が参加するための前提条件だった。国と空港公団(現空港会社)が、これを表明しないかぎり、そもそもシンポジウムは開かれなかったのだ。村岡運輸大臣(当時)が、「いかなる状況下においても強制的手段をとらない」ことを文書で確約したことが証言された。
 シンポジウムでは、①空港建設を強制的手段で強行したことが果たして許されるのか、②事業認定処分はすでに失効しており行政代執行はもはや許されないのではないか、との2点が大きな争点だったという。
 シンポジウムは15回開かれ、その最終回で以下3点にわたって隅谷調査団が提言した。
 ①力による対決に終止符を打つため、国側は収用裁決申請を取り下げる
 ②二期工事B・C滑走路建設計画を白紙にもどす
 ③空港問題解決にあたっての新しい場を設ける

 この最終回では、越智運輸大臣と山本長空港公団総裁(いずれも当時)が、これを受け入れ謝罪した。とりわけ山本総裁は、多くの負傷者や死者を出したことについて謝罪するとともに「このようなことは二度と起こしてはならない」と公的に誓約した。これらのことが一つ一つ明らかになった。
 空港公団は1993年6月16日に二期工事区域のすべての未買収地についての、収用裁決申請と明渡裁決申請を取り下げた。

●「私法上の権利の行使や民事訴訟法は除外」という空港会社の嘘
 尋問はその後、第一次代執行、第二次代執行をはじめとする機動隊による凄惨な暴力を明らかにする。1971年7月仮処分の農民放送塔や地下壕に対する強制執行、1977年岩山鉄塔への仮処分命令による強制執行(鉄塔破壊)、そして10メートルの至近距離からのガス弾直撃で死亡した東山薫事件。
 シンポジウムでは、未公開フィルムを含む映像に、隅谷調査団をはじめ会場全体が大きな衝撃を受けたという。
 平野証人の証言は、そうした暴力だけでなく、小泉よねさんが夫と開墾し英政さん美代さん夫妻が引き継ぎ耕作してきた古込の畑の強制執行についても、厳しく論じられ非難されたことが明らかにされた。
 そして、空港公団が行なったこれらの仮処分と強制執行は、本件市東さんの農地問題と同様の、「民事上の権利の行使」としての強制執行である。
 葉山弁護人は空港会社の準備書面を指示して次のように尋問した。
 空港会社は、シンポ・円卓会議では「空港公団の私法上の権利の行使や民事訴訟によるその実現については全く言及されたことがなかった」と主張するが、これは事実ですかと尋ねた。
 平野証人は、「それは事実に反する」と即座に否定した。

●円卓会議における隅谷調査団の最終所見
 そうした、空港会社の狡猾なロジックの一つ一つを剥ぎ取った上で、尋問はいよいよ核心に迫る。

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「新型コロナはグローバル資本主義の構造問題 空港機能強化など論外」 ──第3回請求異議控訴審 裁判報告(2)鎌倉孝夫証人

 鎌倉証人の立証趣旨は経済学の立場からの、新型コロナによる航空市場の崩壊とその構造分析、「空港機能強化」のための農地取り上げの非を明らかにするもの。これは、弁論で主張した「農地転用目的の喪失」を、専門家の証言を通して立証するものだった。
 一瀬弁護士が次の論点から尋問した。
 ①「コロナ不況」の経済分析、②航空市場の崩壊と成田空港の実態、③その構造的要因、④需要予測の破綻と「空港機能強化」、成田空港会社の経営破綻
 以下はそのエッセンスと象徴的やりとりです。

①「コロナ不況」の経済分析
 新型コロナがもたらした世界的不況について、「従来の不況とどこが違うのか」と問われて、鎌倉証人は次のように証言した。
「たとえばリーマンショックは証券バブルの崩壊に始まり企業収益が大幅に落ち込んだ。今回の不況は人命に関わり、人間関係に響く不況。ここがこれまでとは決定的に違います。人間の協同関係の遮断は、人命と人間社会の存続に関わる危機として捉えるべきです」
 証言は、医療、福祉、教育などの公共部門に対するコロナの影響から、ワクチン開発競争に現れた製薬会社(多国籍企業)の利益追求、さらにテレワークに象徴される労働問題に及んだ。ここでも一貫した証人の考えは、「自然と人間のあるべき関係と人間社会の協同性」について。そこが遮断されることへの危機感だった。

②航空市場の崩壊と成田空港
 次にコロナが直撃した航空市場の実態について。鎌倉証人は、弁護人が読み上げる世界の航空会社の業績悪化に注釈を加えた上で、
「コロナ以前に、航空バブルが発生していた事実が重要。それがコロナで現れた」と指摘し、次のように証言した。
「新自由主義による弱肉強食が競争戦と航空需要を生み出しました。コロナで崩れて、減便とリストラで対応しているが、これは経営サイドの対応策。解決にならず、同じことがまた繰り返されます」
 インバウンド(訪日旅客)の9割以上が観光目的という現状については、
「意図的にあおられた需要である以上、航空輸送を必要とする基盤が何かを問い、政策を転換しないと繰り返す」と指摘して、成田B'滑走路閉鎖の底にある根本問題を明らかにした。

③その構造的要因
 では、「低落した航空需要は戻るのでしょうか?」という尋問に対して、鎌倉証人は次のように答えている。
「グローバル資本主義が新型コロナのパンデミックをもたらしました。乱開発が自然を破壊し、そこに生息するウイルスが人間に取り憑いた。その感染症がグローバルな市場を通して世界に拡散しました。そのグローバリズムを主導しているのは株価至上主義の金融資本。その在り方が問題の根源です」
「国際関係を取り結ぶのが航空需要であるとすれば、それがコロナで断たれてしまった。この状況を『三密』で回復できるでしょうか? 人間の生存と生活に基盤を置くものへと転換しなければ、回復はしません」
 新型コロナの発生とパンデミック、そこからくる不況は、新自由主義・グローバリズムが抱える構造的な問題であり、そのシステムの転換以外に、真の解決の道がないことが明らかにされた。

④需要予測の破綻と「空港機能強化」、成田空港会社の経営破綻
 さらに一瀬弁護士が、「首都圏空港機能強化」策の根拠とされた、国交省の「2013年航空需要予測」(2020年の羽田・成田の航空需要を、国際・国内で発着回数70万回、旅客数1億1000万人〜1億2000万人と打ち出した)について、それが予測の半分にも達しない現実を示して尋問した。
「驚くべきこと。とんでもない。何を根拠にしたのでしょうか」
「これは“機能強化の根拠づくり”。需要があっての機能強化でなく、機能を強化すれば需要が拡大すると夢想したのだから本末転倒です」
「これをまだ続ける空港会社は間違っている」
と語気を強めて批判した。
 今期「数百億円規模の赤字」となることを認める田村成田空港会社社長は、この期に及んでなお、「機能強化を推進する」意向を示している。それに対して
「希望に過ぎず根拠がない。すでに過剰投資、なんの機能も果たせないのに従来通りとは大いに疑問。これによってもたらされることはといえば、人間存在の破壊です」

 そして最後に「経済学の立場から言えば、弱肉強食の新自由主義が人間の生存基盤を破壊している。成田の空港拡張もそうです。コロナの下での資本の支配と破壊を食い止め、いかに再生させるか。市東さんの農地はその意味で重要であり、負けるわけにはいかない」と結んだ。

 次回は午後の法廷。平野靖識さんの証言です。

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「新型コロナで土地の転用目的は消滅し、強制執行の根拠はなくなった」──第3回請求異議控訴審 裁判報告(1)弁論要旨

 弁護団は準備書面(4)を提出し、冒頭これを陳述した。
その主旨は
①新型コロナで航空市場が縮小し、成田の過剰設備がB’滑走路閉鎖で露呈した
②これにより「空港機能強化」に根拠はなく、本件土地の転用目的は消滅した
③よって農地取り上げの強制執行は正当な権利の行使と言えず、許可すべきでない
というもの。
 これは請求異議裁判の核心をズバリ突いている。
 航空需要の壊滅状態とB’滑走路の閉鎖は口頭弁論終結後の新事態である。請求異議の事由にあたることが明白であるばかりか、市東さんの農地の転用目的の消滅を意味し、明け渡し請求自体が根拠を失い、その強制執行は不当であり不許可とすべきと訴えた。

●脆弱な空港経営をコロナが直撃
 この準備書面は49頁に及ぶ。法廷では遠藤弁護士によって要点が読み上げられた。
 その第1は「成田空港B’滑走路の閉鎖と運用再開の実態」について。
 成田空港は、コロナ以前から運用実績が低迷しLCC(格安航空)に後退。テナントに収益をたよる脆弱な体質だった。そこにパンデミックが直撃し、インバウンド(訪日旅客)の9割を観光に頼る成田の航空需要は壊滅的状態に。B’滑走路が閉鎖され一部ターミナルも閉鎖になった。8月に入って運用を再開したが、それはLCCの国内線再開に合わせたものにすぎないことが、運用実績によって明らかになった。

●決して元に戻らない──現れた構造的な大問題
 では、この事態は一過性のもので時が過ぎれば元にもどるか? 決してそうではないことを展開したのが、準備書面の第2である。
 航空不況は日本だけではない。世界各国の空港・航空産業が低迷し倒産し、株価が暴落している。これが長期化することがIATA(国際航空運輸協会)をはじめ航空業界が予測する。
 その根拠は、現代社会が抱える構造的な問題である。
 急速かつ世界的なパンデミックを生み出した根源的な要因は、現代資本主義のグローバリズムと無秩序な世界的乱開発と自然破壊にある。森に潜む「未知のウイルス」が活動の接点で人にとりつき、その感染症がグローバル経済を通して瞬く間に世界中に拡散した。しかもウイルスは年々進化していることが、各種の専門家によって指摘されている。
 航空運輸はその感染ルート。感染を遮断するためには制約が避けられない。
 こうした構造的な問題がある以上、日本と世界が問われているのは、これまでのあり方からからの転換である。グリーンリカバリー(持続可能な経済体制への転換)が世界的に叫ばれている。
 この現実を前にして、成田空港の「機能強化」は論外というべきだ。無理と無駄の積み重ねであり、成田空港会社の収益予測からして不可能である。いま、成田空港にとって必要なのは、虚構の航空需要を根拠にした「機能強化」からの転換である。

●農地取り上げの強制執行は権利濫用 不許可とすべき
 準備書面は、以上の展開の上にたって、第3で、市東さんの農地の「空港転用目的の喪失」と「明け渡し請求権の消滅」を明らかにした。
 次のように書いている。
「パンデミックで国際線の航空需要が消滅し、成田空港に関する機能強化の必要性が全くなくなった」
「この転用目的の喪失は、当然明け渡し請求権の消滅を意味し、請求異議事由にあたる」「転用目的の喪失の中で、確定判決に基づく強制執行は『著しく信義誠実の原則に反し、正当な権利行使の名に値しないほど不当』であり、強制執行は権利濫用であり認められない」
 よって農地取り上げの強制執行を、許可すべきでないと結論づけた。

 この弁論を裏付ける証言が、続く鎌倉孝夫氏の証人尋問。鎌倉証言のエッセンスは次回に。

 

▼準備書面(4)全文をご覧ください →     ダウンロード - js4_s.pdf

 

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圧巻の法廷 強制執行を止める重要証言と補佐人陳述 第3回請求異議控訴審(9/2)

 昨日(9/2)、東京高裁第4民事部(菅野雅之裁判長)で、第3回請求異議控訴審が開かれました。
 弁護団は「新型コロナによって空港用地への転用目的は喪失し、農地明渡請求権は消滅した」と、この裁判の核心を突く明快な主張を展開。鎌倉証人がこれを裏付ける証言を行った。さらに「強制的手段の放棄」(成田空港シンポジウム・円卓会議)の真相と、これをめぐる多見谷判決の虚偽事実を平野証人が証言した。市東さんは天神峰・東峰の農地に生きる思いを証言した。最後に石原補佐人が空港建設の底にある農政批判と、これに抗する市東さんの農業の社会的意義・未来展望を訴えた。
 この日は、裁判の核心を突く重要証言と陳述が続く圧巻の法廷となった。詳報は追って掲載します。(写真は報告会で発言する市東さん)

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