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「新型コロナはグローバル資本主義の構造問題 空港機能強化など論外」 ──第3回請求異議控訴審 裁判報告(2)鎌倉孝夫証人

 鎌倉証人の立証趣旨は経済学の立場からの、新型コロナによる航空市場の崩壊とその構造分析、「空港機能強化」のための農地取り上げの非を明らかにするもの。これは、弁論で主張した「農地転用目的の喪失」を、専門家の証言を通して立証するものだった。
 一瀬弁護士が次の論点から尋問した。
 ①「コロナ不況」の経済分析、②航空市場の崩壊と成田空港の実態、③その構造的要因、④需要予測の破綻と「空港機能強化」、成田空港会社の経営破綻
 以下はそのエッセンスと象徴的やりとりです。

①「コロナ不況」の経済分析
 新型コロナがもたらした世界的不況について、「従来の不況とどこが違うのか」と問われて、鎌倉証人は次のように証言した。
「たとえばリーマンショックは証券バブルの崩壊に始まり企業収益が大幅に落ち込んだ。今回の不況は人命に関わり、人間関係に響く不況。ここがこれまでとは決定的に違います。人間の協同関係の遮断は、人命と人間社会の存続に関わる危機として捉えるべきです」
 証言は、医療、福祉、教育などの公共部門に対するコロナの影響から、ワクチン開発競争に現れた製薬会社(多国籍企業)の利益追求、さらにテレワークに象徴される労働問題に及んだ。ここでも一貫した証人の考えは、「自然と人間のあるべき関係と人間社会の協同性」について。そこが遮断されることへの危機感だった。

②航空市場の崩壊と成田空港
 次にコロナが直撃した航空市場の実態について。鎌倉証人は、弁護人が読み上げる世界の航空会社の業績悪化に注釈を加えた上で、
「コロナ以前に、航空バブルが発生していた事実が重要。それがコロナで現れた」と指摘し、次のように証言した。
「新自由主義による弱肉強食が競争戦と航空需要を生み出しました。コロナで崩れて、減便とリストラで対応しているが、これは経営サイドの対応策。解決にならず、同じことがまた繰り返されます」
 インバウンド(訪日旅客)の9割以上が観光目的という現状については、
「意図的にあおられた需要である以上、航空輸送を必要とする基盤が何かを問い、政策を転換しないと繰り返す」と指摘して、成田B'滑走路閉鎖の底にある根本問題を明らかにした。

③その構造的要因
 では、「低落した航空需要は戻るのでしょうか?」という尋問に対して、鎌倉証人は次のように答えている。
「グローバル資本主義が新型コロナのパンデミックをもたらしました。乱開発が自然を破壊し、そこに生息するウイルスが人間に取り憑いた。その感染症がグローバルな市場を通して世界に拡散しました。そのグローバリズムを主導しているのは株価至上主義の金融資本。その在り方が問題の根源です」
「国際関係を取り結ぶのが航空需要であるとすれば、それがコロナで断たれてしまった。この状況を『三密』で回復できるでしょうか? 人間の生存と生活に基盤を置くものへと転換しなければ、回復はしません」
 新型コロナの発生とパンデミック、そこからくる不況は、新自由主義・グローバリズムが抱える構造的な問題であり、そのシステムの転換以外に、真の解決の道がないことが明らかにされた。

④需要予測の破綻と「空港機能強化」、成田空港会社の経営破綻
 さらに一瀬弁護士が、「首都圏空港機能強化」策の根拠とされた、国交省の「2013年航空需要予測」(2020年の羽田・成田の航空需要を、国際・国内で発着回数70万回、旅客数1億1000万人〜1億2000万人と打ち出した)について、それが予測の半分にも達しない現実を示して尋問した。
「驚くべきこと。とんでもない。何を根拠にしたのでしょうか」
「これは“機能強化の根拠づくり”。需要があっての機能強化でなく、機能を強化すれば需要が拡大すると夢想したのだから本末転倒です」
「これをまだ続ける空港会社は間違っている」
と語気を強めて批判した。
 今期「数百億円規模の赤字」となることを認める田村成田空港会社社長は、この期に及んでなお、「機能強化を推進する」意向を示している。それに対して
「希望に過ぎず根拠がない。すでに過剰投資、なんの機能も果たせないのに従来通りとは大いに疑問。これによってもたらされることはといえば、人間存在の破壊です」

 そして最後に「経済学の立場から言えば、弱肉強食の新自由主義が人間の生存基盤を破壊している。成田の空港拡張もそうです。コロナの下での資本の支配と破壊を食い止め、いかに再生させるか。市東さんの農地はその意味で重要であり、負けるわけにはいかない」と結んだ。

 次回は午後の法廷。平野靖識さんの証言です。

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