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2020年10月

「どんなことがあろうと、私は天神峰の畑を耕し続けます」 市東さんの最終陳述(全文)

 私に対する強制執行は不当だと訴えた裁判の、控訴審が最後の法廷を迎えました。2006年に始まった裁判から数えると、14年にもなります。
 しかし、自分がなぜ訴えられているのか、今もまったくわかりません。
 祖父・市太郎の開墾から百年、うちは代々、地道に畑を耕してきました。空港がやって来るまで、地主との間に、なんの問題もなく畑をつくってきたんです。

・空港会社の裁判で生活が一変

 ところが、今から17年前に突然、空港会社が地主だと名乗り出ました。「畑を明け渡せ」と言い、早朝に機動隊を連れてきて、出荷場や農機具置き場など、建物全部に「公示書」を貼りました。
 畑を耕す親父に隠して、空港会社は畑を買い上げ、地代は藤﨑・岩澤に受け取らせていたのです。
 その後、計画にはまったく無かった誘導路をつくると言い出し、市道を封鎖しました。南台の畑に行くための直線道が使えなくなり、家と畑は空港に囲まれました。抗議した私は不当に逮捕されました。
 そして畑を取り上げる裁判が始まり、私の生活は一変しました。空港会社の要求は、「私に農業をやめろ」「農地を取り上げる」というものでした。先々への不安がつきまとい、まったく無縁だった裁判所にも通うことになったのです。

・小作農にも、耕し続ける権利がある!

 私は小作農ですが、たとえ小作農だとしても耕し続ける権利があります。違いますか?

 農地法は「農地と耕作者の地位を守る」ための法律です。
 一度は「土地収用法」にかけた農地を、それが失効したからといって「農地法」で空港のために取り上げる、──これは正しいやり方ですか?
 そもそも、親父に内緒で農地を売り買いすることは違法じゃないですか!

 一審判決は、「権利の安定性に一定の限界がある借地」だと書いていますが、農地はそんなものではないし、今、述べた経過からしても、とうてい承服できる判決ではありません。
 農家を守るはずの「農地法」を盾に、農地を取り上げる不当は、決して自分だけの問題ではないはずです。負けるわけにはいきません。

・「ウイズ・コロナ」の成田空港  計画中止と縮小へ

 いま、成田空港はガラガラです。家の前のB滑走路はコロナで閉鎖しました。7月に再開しましたが、回復にはほど遠く、家のそばの誘導路を使うLCCのうち2社が撤退しました。今はとても静かです。
 これが「ウイズ・コロナ」の空港です。政府は、私たちに「新しい生活様式」に変えろと言いますが、いちばん変わらなければいけないのは、空港と航空会社だと思う。

 そもそも、コロナの以前に、航空需要の予測がデタラメでした。デタラメな予測によって、「空港の機能強化」や「誘導路の直線化」「滑走路延伸と第三滑走路計画」がだされたことも、はっきりしました。拡張計画に、なんの説得力もありません。
 これでも、裁判所は、「農地取り上げの強制執行」をさせる気ですか!

・私は天神峰で畑を耕し続けます

 正しいものは正しい、嘘はつかない。私はそういう仕事をしてきたつもりです。
 親父は「空港に反対する者は正直でなければいけない」と言っていました。そうでなければ、反対運動はできないし、無農薬・有機農業もできないんです。いちばん大事なものは、人と人との信頼関係です。
 消費者は私たちを認めています。畑見学に子どもを連れて多くの家族がやってくる。「おいしいね」と言って食べてくれる。自分は安全で美味しい野菜づくりに精魂こめる。こういうつながりこそが、自分の宝です。

 私の農地が潰されたら、萩原さんと一緒に作ってきた産直も終わりです。
 私自身の生業が立たないばかりか、長い時間をかけて作ってきた消費者との関係も失ってしまいます。
 「デタラメばかりの空港に、畑を取られてたまるものか」という気持ちです。

 私は、裁判長に言いたい。

土は生きている。土を殺すな。コンクリートの下にするな。
俺の仕事と誇りを奪わないでくれ。
農業をおろそかにしてはならない。
強制執行を許可しないでほしい。

どんなことがあろうと、私は天神峰の畑を耕し続けます。

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<速報 最終弁論> 請求異議裁判の集大成 342ページの大弁論(10/22)

 昨日(22日)午後、東京高裁第4民事部(菅野雅之裁判長)で、請求異議控訴審の最終弁論が行われました。
 弁論に先立ち、冒頭、控訴人・市東孝雄さんが最後の陳述を行い、石原健二、内藤光博両補佐人が陳述しました。また、前回、証言に立った鎌倉孝夫氏から、コロナ禍の経済分析についての補充意見書が提出されました。

 市東さんは、足かけ14年にもなる裁判が自分に何をもたらしたかを語り、「小作農にも耕す権利がある」と一審高瀬判決を強く批判。コロナ禍で飛行機も飛べない空港のために、強制執行を認めることの不当を訴えました。
 そして最後に、裁判長を見据えて次のように訴えました。
 「土は生きている。土を殺すな。コンクリートの下にするな。
  俺の仕事と誇りを奪わないでくれ。
  農業をおそろかにしてはならない。
  強制執行を許可しないでほしい。
  どんなことがあろうと、私は天神峰で畑を耕し続けます」

 この農地を守る市東さんの決意に続いて、石原補佐人は農業の公共性を踏まえて家族農業の世界的趨勢を論述。衰退する日本農業における市東さんの農業の大切さを陳述しました。内藤補佐人は、強制執行の権利濫用と過酷執行性について憲法論の立場から詳細に論じました。

 弁護団の最終弁論は請求異議裁判の文字通りの集大成。342ページの大作でした。全ての論点が、一審高瀬裁判長の不当判決に対する徹底批判です。その最後は、コロナ禍によって機能不全の成田空港を詳論。それが一過性に止まるものでないと論述し、「本件農地を空港用地に転用する必要性は喪失した」「明け渡し請求権は消滅した」と断じています。
 その結語の要点は次のようなものです。
・ パンデミックによる「コロナ大不況」は世界史的な大事件。
・世界の航空需要は激減し、とりわけ成田空港の需要が元の状態に戻る可能性はない。
・この新事態の下では、誘導路を直線化して「効率的な運用」を実現するという本件農地の空港用地転用の必要性は皆無。
・本件農地を空港用地に転用する必要性が消滅した以上、給付訴訟(農地法裁判)の確定判決は死文と化しており、本件強制執行は著しく信義誠実の原則に反し、正当な権利行使の名に値しないほど不当。
・よって、本件強制執行は明白な権利濫用となり、請求異議事由が認められるので、原判決を取消して本件強制執行を許可しない旨の判決が下されるべきである。

 判決は、12月17日木曜日、午後2時。
 わずか2ヶ月後のあまりの早さ。菅野裁判長は、この日の陳述・弁論に正対・熟慮して、強制執行をやめさせる判決を下せ。

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本日(10/22)請求異議控訴審最終弁論  全日空が成田国際線8割を削減(NHKトップニュース)

 本日(10/22)、請求異議控訴審の最終弁論。
 午後2時開廷 *傍聴希望される方は、遅くとも1時半までにお集まりください
 デモがあります。 *11時30分日比谷公園霞門集合
          *デモ終了後、裁判所要請行動
 これらに先立ち、私たちは裁判所前でビラを撒き訴えます。

     ***
「全日空が国際線の大多数を休止、羽田に集約」
 昨夜7時のNHKニュースがトップで流しました。ネットのニュース・情報サイトでもかけめぐりました。
 新型コロナにより国際線で9割減便が続き、回復のきざしなし。今期5000億円規模の大幅赤字の見通しです。
 このため羽田、成田、関西、中部4空港の国際線の大多数を休止し、羽田に集約。
 とくに成田発着は8割、削減することを決定したと報じています。
 すでにLCC2社が成田撤退を表明。

 これがコロナ禍の現実です。しかも一過性に終わることではありません。
 成田空港は縮小こそすれ、増設・新設など論外。コンクリートを剥ぎ取って農地に戻せ!
 農地取り上げ強制執行など許されることではない。

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どなたも歓迎! 裁判傍聴  10・22請求異議控訴審最終弁論

飛行機が飛べないのに、なぜ農地をつぶして拡張するのか?!

 │新型コロナで需要予測のデタラメと成田空港の設備過剰があらわになった。

 │これにより農地の空港への転用目的は消滅した。
 │市東さんの農地取り上げの強制執行は正当な権利の行使と言えず、
 │裁判所は許可してはならない。


 新型コロナの直撃で、成田空港B'滑走路は3ヶ月余にわたって閉鎖。再開したものの今も回復の見通しは立ちません。
 そもそも、インバウンド(訪日旅客)のなんと9割が観光目的。安倍内閣の「観光立国推進基本法」のもとで、国交省が2013年にまとめた需要予測(2020年代には成田・羽田の処理能力が追いつかない)は、根拠のないもだったことはいまや明らかです。「航空需要は右肩上がり」だといって、野放図に拡張してきたツケが、いま大きくのしかかっています。

 他方で、新型コロナは世界的な食糧危機をもたらし、WFP(国連世界食料計画)は、今年2億6,500万人が食料不安に陥ると警告しました。食料自給率37%にまで落ち込んだ日本がとるべき道は、農業・農地の再生です。
 私たちは農地を守るために身体を張る市東さんに共感します。

 請求異議控訴審 最終弁論
 ◼️10月22日(木) 午後2時開廷

 ◼️東京高裁1階大法廷
  *抽選があります。傍聴を希望される方は、開廷の30分前までにお越しください。

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