裁判

再度、強制執行停止を決定  千葉地裁

 21日午後、千葉地裁民事第4部は、判決直後に行った市東さんの執行停止申し立てを、認める決定を行なった。

  これは20日の不当判決で、執行停止決定が取り消されたことに対する措置。この日、弁護団は、控訴手続きの間隙を縫って強行しかねない空港会社の悪質さを疎明する書面を提出し、決定を迫った。
 この再度の決定により、高裁に係属するまでの空白期間に強制執行を強行しようという、空港会社の卑劣な策謀は断たれることとなった。

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最低最悪の不当判決!  速報 請求異議判決(12・20)

 判決は想定されたなかでも最低最悪の内容だった。主文のなかみは以下。

 ①強制執行を許さないとの判決を求めた市東さんの訴えはいずれも却下
 ②判決までの間、執行を停止するとした裁判所の決定を取り消す
 ③訴訟費用は原告負担
 ④この判決は仮に執行できる

 市東さんと弁護団は直ちに控訴し、併せて、「急迫の事態」を理由とする執行停止をあらためて千葉地裁に申し立てた。
 この新たな申し立ては地裁民事第4部に係属し、ただちに面接となったが、その場で裁判所は「高裁に係属するここ一か月余のうちにも空港会社が強制執行しかねないとする疎明を、補充書として提出するよう要求。明21日、午後2時15分から再度、面接することを確認して終わった。

 判決は、いちばんの争点である「強制執行権の放棄ないし不執行の合意」(強制的手段放棄の公約のこと)について、小泉さんの和解を無視して「口頭弁論終結前の事由」などと言いなし、事実を偽造した悪名高い多見谷判決を踏襲して「強制執行権の放棄ないし不執行の合意は認められない」と切り捨てている。
 また、権利濫用の主張については、上記デタラメな判断に加え、「農地を転用して空港にすることには公共性がある」から、「強制執行は権利濫用ではない」と決めつけている。対極にある農業の公共的役割や営農権については「採用しない」というのみなのだ。
 いったいこの二年間で行われた、重厚な論述、歴史証言、補佐人陳述の何を聞いていたのかと思わせるスカスカの判決内容だ。要するに何も見ず、何も聞かず、空港会社に肩入れありきで頭を組み立てているとしか思えない。

 〝すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される〟(憲法76条3項)
 高瀬裁判長は、この裁判の折衝の場で、何を思ってか「自分は小役人ですから・・」と、驚きの言葉を発している。いかにも、己の職責もわきまえずに権力を手にした小役人らしい判決というべきものだ。

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非道を、ふたたび許さない! ──請求異議判決迎え撃つ11・18シンポジウム 報告(1)

_tr_2  11月18日、文京区民センターでシンポジウムを開催しました。来月20日に予定される請求異議判決を前に、「非道をふたたび許さない」「判決を迎え撃つ」としたシンポジウム。この一年間の成果を確認し、市東さんとともに判決に臨むものとして開催しました。

 最初に、『過酷執行─1971年三里塚第二次代執行の小泉よねさん』と題するDVDが上映されました。請求異議裁判で周知されたこの言葉を視覚的に映し出して、市東さんに迫る問題を明らかにしようとする試みです。
 上映の後の開会の辞で事務局は、「今日のシンポジウムは判決を控えて、これを迎え撃つ決起集会。映像にある小泉よねさんに対する強制執行は絶対に許せない。これと同じことを市東さんにやることは絶対に認められない。判決がどのようなものであろうと、市東さんとともに闘って農地を守り抜きたい」と挨拶。
 続いて坂本進一郎共同代表のメッセージ。「判決を座して待つのか、それとも迎え撃つのか、──迎え撃つ構えと力が、今日のシンポジウムに託された。抑圧あるところ解放あり。正義は勝たなければならない」と呼びかけました。

 いよいよ講演です。私たちが考える「判決を迎え撃つ」とは、市東さんの闘いの正当性と正義に確信をもって、判決に立ち向かうことです。請求異議裁判を切り開いた内藤光博教授と石原健二氏の講演と報告です。
 最初に、「生計の途を断ち、生きる意欲までも奪いつくす過酷執行」と題して内藤教授が講演しました。内藤教授は、一年前のシンポジウムで行った自らの問題提起を踏まえ、その後に法廷で進められた理論の深化を三つの点から明らかにしました。
 第一に、「農業・営農権」保障の憲法的意義。「農業」それ自体の言葉は現行憲法にはありません。しかしその「憲法的価値」と「憲法的公共性」は、現行憲法前文と25条生存権から導き出されることを明らかにしました。
 そして海外においては、スイス連邦憲法と韓国改憲草案で、農業の本源的役割を位置付けていることを紹介しました。
 さらに、「農業の特質と複合的権利性ゆえに、農地の強制収用は住居や生産手段などの生存基盤を剥奪するにとどまらず、長年の労働と創意工夫を注ぎ込んだ精神性をも剥奪することから人格的生存をも侵害する過酷執行であって憲法に違反する」と訴えました。
 第二に、「過酷執行」論。その過酷執行性ということでは、執行過程における暴力性と執行後に続く人間破壊の二面性を明らかにし、そのことが小泉よねさん強制代執行についての法廷証言で裏付けられたことを確認しました。
 「公式謝罪」と「強制的手段の放棄」の今日的有効性が、そこに至る経過と小泉さん和解の完成によって証明できたことが確認されました。
 第三に、「権利濫用」論。市東さんに対する強制執行について、①根本的な問題として「人間の尊厳」(憲法13条)を突き崩すものであること、②民法における「権利濫用5類型」にことごとく該当すること、③市東さんにおいてもよねさんと同様に、執行過程と将来の人間破壊という二面性をもつ過酷執行であることを明らかにしました。
 内藤教授は最後に、「強制執行は市東さんの人格的自立を損なう「人間の尊厳」の侵害行為。憲法76条3項が言うように、裁判官はその良心にしたがって独立して職権を行う。正義と公正だけに縛られ、人間の尊厳に立ち返って判決を出すべきであり、執行停止を判決すべき」と締めくくりました。

 続いて石原先生の農政報告。
 「安倍内閣は日米FTAのことを〝TAG〟と言っている。敗戦したのに〝終戦〟と言い換えたのと同じで、国民を騙す言葉です」と指摘し、欧州EPA交渉における関税引き下げの実態と数値の詳細を紹介。「TPP11ではTPP12より緩和し、EUにはさらに譲歩している。自動車の関税撤廃の要求の見返りとして農産物を差し出している」と話しました。
 さらに「今年はコメ政策の大きな曲がり角。政府によるコメの配分が無くなりました。あと5年で、米作農家は自分で作って、自分で売れ、余ったらエサ米にまわせという。要するに、天変地異で大きく変わるコメ生産を、余った時も足りなくなっても農家の責任にする。主食をこのように扱うのは先進国で日本が唯一」怒りを込めて報告。
 「食管法を廃止してから、生産者米価も消費者米価も商社が決定していて、農家から安く買い、消費者には倍で売る」「15ヘクタールないと米作農家は成り立たず、農家は廃業。代わって企業が参入し農地取得が進み、農家のための農業政策は放棄されている」
 そう訴えて最後に、「この農政のもとで、最後に残るのは市東さんのやり方しかないと僕は思う。それは生産者と消費者が直接結ぶこと。いまや流通から生産までも企業が支配する時に、生産者を理解する消費者と生産者が手を組んで、直接的に広げていく。これ以外にない」と結びました。

 以上がシンポジウムの肝になる前半部分。休憩をはさんでの後半は次回に報告します。

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弁護団の最終弁論第2部  9・27請求異議裁判報告(3)

 第2部は、強制執行がまさに「権利濫用」であることの具体的展開である。
 ここの論点は便宜的に第1部からの通し番号なので、第5がその総論となった。傍聴していると、なぜ弁論の途中に「総論」が入るのかと思わされるが、ここから第2部が始まるのだった。

第5総論 本件強制執行権行使は、空港会社の「権利濫用」「信義則違反」だから裁判所は許可すべきではない
 1993年5月23日、第15回成田空港シンポジウムで、隅谷調査団は「平行滑走路の用地の取得のために、あらゆる意味で強制的手段が用いられてはならず、あくまでも話合いにより解決されなければならない」という最終所見を公表した。空港公団(現会社)、国、千葉県が全面的に受け入れることを公的に誓約した。
 ここに「強制執行権の放棄」もしくは「不執行の合意」が成立した。空港会社の強制執行権の行使の権利濫用は被告の公的誓約を裏切って強制されようとしているものであり権利濫用性は一層明確である。
 そして権利濫用の5つの類型を提示して、これにことごとく該当することを明らかにした。
 自己の以前の行為に矛盾・抵触する(最終意見遵守の公約破棄)
 過酷な執行(営農基盤の破壊と人生を奪う。よねさんとの類似性)
 加害目的の執行(見せしめ執行)
 社会正義に反する(生存的基本権、営農権など)
 不誠実な手段によって取得した権利の行使(秘密売買による所有権の移動など)

 この総論に続いて、権利濫用を明らかにする各論が展開された。
第6 市東さんの有機農業と産直型協同性を破壊し回復し難い損害を強制する
 ここでは、空港周辺地域で発生・発展してきた有機農業と市東さんたち三里塚産直の会のシステムと歴史が詳細に展開された。市東さんの農地と農業は長い年月と不断の努力によって作られたものであること、廃業の危機に瀕する日本の農家・農業の再生展望からしても潰してはならないことが、石原健二氏(農業経済学)の分析・意見を元に展開された。
 強制執行による有機農業と産直型協同性の破壊は、市東さんの人生そのものの否定であり、「へ」の字誘導路の手直し目的ということからしても著しく均衡を欠く超過酷執行であり権利濫用であって認めてはならないと結論づけた。

第7 憲法が保障する「営農権」「生存権的財産権」を侵害する過酷執行
 内藤光博教授(憲法学)が意見陳述した理論の実践適用である。まず1961年農業基本法前文における農業の社会的役割をふまえて、農業を営む権利としての「営農権」を憲法的人権に位置づけ、すでに定説となっている「生存権的財産権」としての農地をもうひとつの根拠として、市東さんの農業と農地の社会的意義と役割を明確にした。
 この営農権を奪う強制執行は、基本的人権としての「職業選択の自由」「勤労の権利および自由」さらに「個人の尊厳」の否定につながることを明らかにした。
 また、人の食料供給に不可欠な農業は、憲法前文の「欠乏からの自由」(平和的生存権)と25条生存権と深くかかわり、「憲法的価値」「憲法的公共性」を持つことを明確にして、市東さんの農業がその保障を強く受けるべきことを鮮明にした。

第8 小泉よねさん行政代執行と同様の見せしめ、かつ苛酷な執行
 ここでは、小泉英政・加瀬勉両証人の証言と、成田空港シンポジウムで上映された小川プロの未公開フィルム、北原鉱治反対同盟事務局長の著作から、よねさんの代執行の過酷執行性を浮き彫りにし、市東さんの強制執行との同質性を明らかにした。
 強制執行は執行される者の「全人格否定」であり「死刑宣告」を意味するものであって、何ものをもっても補償できないことを明らかにした。

第9 対象農地の収奪における権利濫用
 ここは第7と対をなす「営農権」の具体的論述である。収奪対象としての有機の農地が、いかなる労働の営為によって作られ維持されているかを詳述して、他に変えるものができないことを鮮明にした。有機農業と産直型協同性の形成とその社会的意義について明確にした。

第10 「への字」誘導路は、会社自ら計画変更し、国から安全性の許可を得たものであり、その解消を求めて強制執行を行うことは信義則に反する
 空港会社が強制執行の理由としている「へ」の字誘導路の解消(直線化)について、さまざまな角度から検討したうえで、以下、結論づけた。
 すなわち、空港会社は、用地問題を解決できず、当初計画を変更してB’滑走路と「へ」の字誘導路を計画し、「運用上支障なし」「安全」として国の認可を取り付けた。そして供用を開始して、騒音と事故の危険で追い出しを図ったが、叶わぬとなると、こんどは「空港機能の強化」をかかげて「へ」の字の解消へとふたたび計画変更して、農地を取り上げようとしている。ここに執行の本質がある。信義則に反して権利の濫用にあたり、到底認められない。

第11 成田空港の国際航空需要の著しく減少し公共性は認めらず、強制執行に必要性・緊急性はない
 鎌倉孝夫氏(経済学)の経済分析からの展開。旅客数と貨物取扱量のいずれもピークを打ち下落を続けており、運用実績は著しく低迷している。これによって余剰設備を抱えながらも、「空港の機能強化」を叫ぶのは、「成田空港の地位の低下」の現実にその根拠がある。
 いまや空港会社は本業の航空系収入ではなく、テナントやリテール事業に走って商業資本と化している。他方、空港騒音や周辺住民の生活破壊は「空港機能強化」によってさらに加速する。空港会社は利潤追求を行動原理として公共性を喪失している。
 人が平和のうちに生活・生存することこそがもっとも重要な人間的権利である。それを保障することは経済学の規定からしても憲法原理に照らしても最優先の公共目的である。成田空港は公共的に無価値であるばかりか、日々公共性を破壊している。

第12 南台の「GSE、ULD置場」は虚構の計画に基づくものであることは、いまや明白であり、強制執行は不必要かつ違法
 南台の空港告示区域外の土地に対する強制執行が、虚構の計画によるものであることは戸井健司(当時公団職員)証言で証明された。のみならず、ターミナルに隣接する取香地区にはその当時からGSE、ULDの大規模計画が存在し、すでにその建設工事は完成し供用されている。
 南田の転用計画は、千葉県知事から賃貸農地の解約許可処分を掠め取るための虚構であり、許可の騙し取りだった。これは明白に、権利濫用の類型(不誠実な手段によって取得した権利の行使)に該当する。
 強制執行の必要性・緊急性は、空港会社によって何ひとつ立証されていない。南台では正当な耕作地への工作妨害と破壊、天神峰では建物など営農手段の全てを破壊する。そうすることで生計の資を奪い、農民としての死を強制し野垂れ死にを強いる強制執行は悪質この上なく、加害意思、加害目的を伴う権利の濫用的行使であり、許容される余地はない。

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弁護団の最終弁論第1部  9・27請求異議裁判報告(2)

 最終弁論のために弁護団がまとめた準備書面は、231ページの分厚いものだが、それは大きく<2部= 12論点>で構成されている。
 第1部は、請求異議の提起の要件である口頭弁論終結後に発生した事態について。第2部は、強制執行がまさに権利濫用であることの具体的事由である。
 弁護団はこれらによって、市東さんに対する強制執行が、71年第二次強制代執行(小泉よねさん強制収用)と同質の過酷執行であり、空港会社の権利濫用であって社会正義に照らして許されず、執行停止を求めたのだ。
 今回は、第1部の4つの論点のポイントを掲載。

第1 執行段階で具体化した「強制的手段放棄の公約」
 口頭弁論終結後に発生したことで、弁護団が第1にあげたのは、「強制執行権の放棄ないし不執行の合意」の発生である。これは「強制的手段放棄の公約」のことだが、現実に意味を持つのは、実際に〝執行〟が具体化する段階に入ってからである。
 空港会社は「強制的手段の放棄」は1994年の円卓会議のことであって、口頭弁論終結後のことではないと弱々しく主張するが、その主張は打ち砕かれた。

第2 小泉よねさん問題の和解解決
 口頭弁論終結後に発生した第2の事実は、小泉よねさん問題の和解解決である。
 被告空港会社(空港公団)は、成田空港シンポジウムと円卓会議において「あらゆる意味において強制手段はとらない」ことを地元農家と日本社会に公約した。さらに、2003年には黒野総裁が東峰部落あて書簡で再度確認した。その後、よねさんに対する強制代執行(過酷執行)について、2015年5月21日に小泉英政さんとの間で和解が確定した。ここでも「よねさん問題のような不幸な出来事を繰り返さない」として「強制的手段の放棄」が確認された。これは2015年3月4日の口頭弁論終結後のことである。
 市東さんに対する強制執行は、これらの公約に反して信義則に反する権利濫用である。

第3 離作補償の不払い
 第3の事実は、離作補償不払いの事実。千葉県知事は、農地賃貸借の解約を許可するにあたって離作補償の支払いを条件とした。しかし、空港会社は珍妙な「二重払い論」(市東さんが明け渡さないうちに補償金を支払えば農業利益と補償金の両方を得ることになる)をたてにして支払おうとしない。口頭弁論終結から現在に至るまで支払わずにいるが、これは言わば、日々、不作為を更新しているのである。

第4 第3滑走路建設等の「空港機能強化策」
 口頭弁論終結後の第4の事実は、第3滑走路建設計画とB滑走路延伸計画(2016年9月27日提示)など「空港機能強化策」の新事実。さらに2017年7月15日には、オーバーランから東峰の集落にあわや激突寸前の重大インシデントを引き起こしている。「空港機能強化策」は市東さんを始め東峰地区や近隣住民の生活をさらに侵害する新事態であり、7・15の重大インシデントは、これまで懸念されたことが現実に発生したという点で、決定的な意味をもつ。

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圧巻の最終弁論  9・27請求異議裁判報告(1)

_tr  27日の最終弁論は、始めに市東孝雄さんの陳述で始まった。

 ●あくまでも畑を耕し、絶対に動かない
                ──市東孝雄さん
 市東さんは冒頭、「自分の仕事と農地に誇りをもって生きてきた」と述べた。野菜づくりの方法には完成がなく、試行錯誤しながら土壌を作り、日々の工夫と努力の積み重ねによるしかないと語り、「天神峰と南台の農地はそうしてできた私にとっての命です」と訴えた。
 この市東さんに対して、空港会社は農地を〝只の土地〟だと考え、カネを積むから出て行けという姿勢。事実をねじ曲げて空港会社を勝たせてくれた多見谷判決と同様に、裁判所に任せておけば大丈夫だという態度だと弾劾した。
 強制執行は市東さんが耕す農地の7割以上にのぼる。「そのすべてが畑で育つ野菜と一緒につぶされます。祖父の代からの汗と涙、これまでの努力が重機の下に押しつぶされ、二度と野菜ができないと思うと、悔しくて涙が出る」「私に対する強制執行と、よねさんに対する代執行とのどこが違うのか」と訴えた。
 そして「二年間にわたる弁論と証言、補佐人の陳述で、権利濫用は完全に明らかにされたと信じている」と述べた上で、その審理に踏まえるはずの「裁判長の判決いかんで、四十七年前のよねさんに対する代執行と同じ地点に自分は立たされる」と高瀬裁判長に迫り、次のように決意を述べた。

 「私はあくまでも天神峰と南台で私の畑を耕し、絶対に動かない」

 そして最後に、「農地取り上げの強制執行は認めない、との判決を強く求めます」と訴えた。
 堂々とした最終陳述に、傍聴席は感動に包まれ大きな拍手が送られました。

 ●憲法違反の権利濫用・過酷(苛酷)執行 ──内藤補佐人
 続いて陳述した内藤光博補佐人は、まず端的に陳述の主旨を述べた。
 「市東さんの農地に対する強制執行は、生存権的財産権および営農権を侵害し、人間としての尊厳を踏みにじる過酷執行であって憲法に違反し、許されない」
 そして民事執行手続における「公平な執行」の原則をあげて、「法は債務者(市東さん)と債権者(空港会社)の利益を公平に考えており、債務者が不当な不利益を受けることがないように配慮」すべきで、「まる裸にするような過酷な執行は許されない」と陳述した。
 さらに、先の陳述で示した「権利濫用の5類型」に、市東さんに対する強制執行のすべてが当てはまることを具体的に指摘するとともに、その本質的な問題について以下のように述べた。
 なによりも、市東さんに対する強制執行には「二重の意味で権利濫用(過酷執行性)」があること。①公約違反による執行がもたらす小泉よねさん事件との同質性、②耕作地の73%を取り上げることによる「営農権」「生存的財産権」の侵害。その二重性である。
 また、その過酷執行にも「現在」と「将来」にわたるものとの二つがあると指摘した。一つは、農地と生産手段など生存の基盤そのものの収奪(現在の人権侵害性)。二つ目は、精魂込めて打ち込む有機農業と生きる意欲を奪い取って市東さんの尊厳を侵害すること(将来の人権侵害性)。
 内藤補佐人は最後に、「市東さんの魂というべき農地を根こそぎ奪うことは、よねさん事件とまったく同じで、市東さんに人生を否定し精神的な死をもたらす」「土地収用法に代えて農地法を使うことの悪質性は明らかであり、公式謝罪と公約の放棄は全国民に対する背信行為であって到底容認できない」と結んだ。

 ●農家が生き残る最良かつ先駆的な営農形態 ──石原補佐人
 石原健二補佐人は、冒頭、「前回の陳述からわずか2ヶ月、その間にも日欧EPAや日米首脳会談、コメ政策の転換で農家がより厳しい状況に追い込まれている」と声高に訴えた。矢継ぎ早の対外交渉は、いずれも、自動車など工業製品と引き換えに農産物市場の全面開放を加速させている。
 対外的に、日本のコメはまったく太刀打ちできない。政府は対策として「産直型の流通と販売を奨励しているが、その場合の生産者は認定農業法人、販売相手は卸と企業、企業のための選別政策」だと陳述した。農家は政策の埒外におかれているのだ。
 ここに至る農政のジグザグを、石原補佐人は次のように端的に語っている。
 出発は1961年農業基本法。ここで日本は、それまでの米麦中心の農業から麦・大豆を捨ててアメリカから輸入し、「自立経営農家の育成」「多様な農業振興」を掲げて、畜産、果樹、園芸などを、農家や農業団体の反発を押し倒して推進した。
 しかしこの構造改善事業とともに起きたことは、コメの生産過剰と農産物自由化の流れ。稲作や畜産農家の廃業と果樹、園芸の衰退といった現在の状況は、まさにこのジグザグと食料自給の理念を捨てた際限のない「自由化」によるというのだ。
 石原補佐人は、構造改善事業の一環として進められたシルクコンビナート構想が空港によって中止とされ、国策に揺さぶられた三里塚の農民(青年)たちが、農業つぶしの象徴である空港に反対し、有機農業と産直型協同性を他に先駆けて進めてきたことを改めて明らかにした。その中に生まれた市東さんの農業を、「今の最悪の農業環境のなかで、農家が生き残る最良かつ先駆的な形態」だと高く評価した。
 そして「2009年の農地法改正は耕作者主義を排除し、農地を公共財と位置づけた。これは農地を一般の土地と同様の商品として扱うもの」
「しかし農地を公共財というが、農家にとっては生存権的財産権。先の分からない開発に農地を取られてはならない。即刻、安心して市東さんが農業を続けられるようにすべきです」と訴えた。

 限られた時間のなかで、この裁判の核心を突き出した補佐人の陳述に、傍聴席は大きな拍手で応えた。
 その後、法廷は、弁護団による最終弁論に移った。用意された書面は230ページにわたる膨大なもので、12の論点で構成されている。3時間近い大弁論が行われたが、その詳細は次回のブログで。
 以下に、市東孝雄さんの陳述全文と、内藤、石原両補佐人の陳述要旨を添付します。

 ▼市東孝雄さん最終陳述→「20180927shitou.pdf」をダウンロード
 ▼内藤補佐人陳述要旨→「20180927naitou_blog-X.pdf」をダウンロード
 ▼石原補佐人陳述要旨→「20180927ishihara.pdf」をダウンロード

 *写真は裁判報告会で挨拶する市東孝雄さん

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判決期日は12月20日です!

 昨日(27日)、千葉地裁民事第5部(高瀬順久裁判長)で、請求異議裁判の最終弁論が行われた。原告・市東孝雄さんが最終陳述を行い、内藤光博、石原健二両補佐人が陳述し、その後、弁護団全員が長時間にわたる最終弁論をおこない結審となった。

 判決期日は、12月20日(木)午後2時。
 裁判の詳報は次回のブログで行います。
 

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文書開示の大詰め迎え、70分の更新意見  9・3耕作権裁判

 9月3日、千葉地裁民事第2部(内田博久裁判長)で、通算38回目の耕作権裁判が開かれた。この日は、左陪席の交代(遠藤安希歩→瀧澤孝太郎)にともなう弁護団の更新意見。

 賃借地の誤認と偽造文書、関係文書の開示問題が大詰めを迎える節目にあたり、 70分を超える大弁論となった。その項目は以下。
①本件土地の所有権を取得していない
②「同意書」「境界確認書」は偽造文書である
③地主・藤﨑政吉からの聴取結果を精査しても、空港会社の賃借地特定は事実に反する
④一部耕作地の賃借権時効取得
⑤賃借地の位置は、収用裁決申請図等の記載内容からみても原告主張の位置ではない
⑥賃借地特定に関する元永メモの信用性は高い
⑦空港会社は文提命令に基づき墨塗り部分を開示すべき
⑧農地強奪の本件訴訟は、1971年小泉よね氏に対する酷烈きわまる代執行を再び行わんとするものであって、訴権の濫用であって許されない

 前回、内田裁判長は弁護団の厳しい追及の前に訴訟指揮を一転させ、空港会社に対して〝墨塗り文書〟の任意開示を勧告した。追い詰められた空港会社は、6月11日付でほんの一部を開示した。だが、肝心要のところは、「利害関係を有するもの、用地交渉の手法等の記載があり、今後の用地交渉に影響する恐れがある」などとの理屈をつけて、墨塗りのまま隠された。空港会社にとって、この裁判上、よほどまずいことが書かれているに違いない。
 裁判長から、さらに一部の提出要請が出され、弁護団は弁論であらためて全面開示を要求した。

 また、弁護団は南台農地の一部の時効取得を主張しているが、その正当性を、天神峰農地との比較において詳細に論じる書面を提出した。天神峰では契約地以外の土地を市東さんの賃借権時効取得としている。この違いも、この裁判における不可解であり、究明されるべきところである。

 耕作権裁判は、偽造文書と、関係する会社隠匿文書、墨塗り文書の全面開示をめぐって、さらに闘いが続くことになる。

 次回期日は、11月19日(月)、次々回は2月18日(月)。いずれも午前10時30分開廷です。

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〝空港会社の違法は、権利濫用5類型の全部〟──内藤補佐人が空港会社の違法を直撃 7・17請求異議裁判報告(3)

 「私は陳述において、本件強制執行が、市東氏の営農権を侵害する過酷執行であり、『人間としての尊厳』(憲法13条)を踏みにじる重大な権利侵害であり違憲であることを論証する」──内藤光博補佐人(憲法学)は、冒頭、こう切り出した。

 ここで「過酷執行」とは、権利濫用的で基本的人権を侵害する強制執行のこと。憲法に反するから、してはならない。この核心に踏み込むために、内藤補佐人はまず、農を営む権利としての「営農権」保障を憲法の中に求めた。
 なによりも憲法前文にある平和的生存権。「……われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
 そして25条の生存権。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
 「恐怖と欠乏」「健康で文化的な最低限度」のいずれにおいても、食料生産のための農業(営農)の存在が大前提。内藤補佐人は、農業および営農が人間の生存と平和構築に不可欠であり、高い憲法的価値を有するものだと論述した。
 そして、
 「たしかに日本国憲法に「農業」の言葉はなく、世界の憲法を見てもそれは少ない。だがスイス連邦憲法104条(農業)の強化改正や、フランスの農業法案、韓国憲法改正法案では、主に「食糧安保」や「農業の多面的機能」「公益的価値」の視点から、農業の憲法的価値を明らかにして、憲法による農業保護を規定している」
 内藤補佐人は、このように最新の状況を詳しく紹介するとともに、補佐人が「営農権」として提唱する新たな権利について話し始めた。

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〝空港会社の暴挙に対して、義憤にかられてこの場に立った〟    石原健二補佐人  7・17請求異議裁判報告(2)

 補佐人として証言台に立った石原健二氏(元立教大学教授)は、冒頭、自身のかつての三里塚体験(農業に希望を抱いた青年たちと、その中の一人の自殺)を話した上で、「戦地からの帰還の遅れから残存小作地の扱いにされ、市東さんの合意なく売買して取り上げるとは、公的機関としては考えられない暴挙。義憤にかられてこの場に立った」と言って陳述を始めた。
 いま、日本の農業は存続できるかどうかの瀬戸際にあり、市東さんの農業はその中で生き残る一つの示唆を与えていると訴えた。

・日本農業のかつてない危機
 石原氏はかつてない日本農業の危機的姿についてメモも見ないで詳細な数字を上げていく。
 2018年、食料自給率37%。農業生産額は11.5兆円(90年)から2015年8.8兆円と5年で3兆円近く減額した。農家戸数は1990年の297万戸から2017年125万戸にまで激減。他方、企業の農業参入は2016年2676社と激増している。
 農地面積は1961年の607万ヘクタールから2017年444万ヘクタールにまで下がり、国の言う安全水準をとっくに超えて下がり続けている。
 三里塚を中心とする北総台地は、岩手北部、鹿児島、北海道とならぶ優良農業地帯であり、農業構造改善事業の一環としてシルクコンビナートを誘致したが空港によってつぶされた。空港が農業をつぶした証拠をあげれば、空港設置の1966年に1,520戸あった専業農家は、開港の1970年にはわずかに314戸と、5分の1にまで激減している。

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