裁判

旧公団役職員の証言求め攻防続く 8/22耕作権裁判

 8月22日、千葉地裁(本田晃裁判長)で耕作権裁判の口頭弁論が開かれた。弁護団は、南台農地の用地買収をめぐる「各種の記録、報告書は存在しない」と主張する空港会社の矛盾を徹底的に解き明かし追及する弁論を展開。さらに偽造文書に係る公団役職員の法廷証言を強く求める弁論を行った。
 逃げ切りを図る空港会社に、本田裁判長は真相に蓋をして加担する姿勢が露骨。その訴訟指揮には最低限の公平らしさも感じられない。
 耕作権裁判は、空港会社役職員の法廷証言を勝ち取るための攻防がさらに続くことになる。

 次回は11月28日午前10時30分 千葉地裁。
 まさに正念場です。多くのみなさん、お集まりください。

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市東さんの更新意見を掲載します(12/6耕作権裁判)

 12月6日午前、千葉地裁で耕作権裁判が行われ、市東さんと弁護団による更新意見が述べられました。
 市東さんの陳述を掲載しますのでご覧ください。

  →  ダウンロード - 20211206shitou.pdf

 

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/速報/ 最高裁が上告棄却を決定 2021.6.8 請求異議裁判

 最高裁第3小法廷(長嶺安政裁判長)は6月8日付で、請求異議裁判の上告棄却を決定した旨、通知してきた。あわせて、上告受理申立についても受理しないとしている。理由は、憲法違反にあたらず、判例違反や法令解釈の誤りも認められないとする結論のみ。
 この最高裁判決はまったく不当。これは地道に有機農業を続ける市東さんから農地を取り上げ、農業に生きることをやめろと宣告するものだ。このたった数行の決定書が、4年にわたる市東さんの訴えと、数々の貴重な証言、弁護団の立証努力、支援運動にことごとく蓋をすると思うと、心底から怒りがこみあげる。
 人々にとって「絶望の裁判所」に正義はない。真実と希望は法廷を降りた現実の世界にある。
 春の畑はその色合いをダイナミックに変えている。農業は人にとっての生命産業。パンデミックで社会が苦闘のさなかに、需要づくりにやっきの成田空港と、その強制執行の後ろ盾に成り下がった最高裁判決は愚かの極というしかない。

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【抗議声明】東京高裁の不当判決に抗議し、市東さんの闘いへの支援を訴えます

抗議声明

 12月17日、東京高裁第4民事部(菅野雅之裁判長)は、成田市天神峰の市東孝雄さんの耕作地について、明け渡しの強制執行を許可する不当判決を下しました。私たちはこれに強く抗議し、ただちに上告手続きに入った市東さんを支え、ともに農地を守ることをみなさんに訴えます。

 成田空港会社が取り上げようとしている農地は、祖父の開墾から三代百年にわたって、耕されてきた無農薬・有機農業の畑です。このかけがえのない農地を取られることは、「我が身を引き裂かれることと同じ」だと市東さんは訴えています。
 判決はこの叫びを踏みにじり、空港会社の過去の違法と新たな権利濫用にふたをして、過酷な暴力執行に道を開くものであって、とうてい認めることができません。
 いま、日本の農業は存続の危機に立たされています。世界では家族農業の大切さが国連決議になったというのに、日本は企業の農業参入をおし進め、農家は軒並み廃業をせまられています。市東さんの問題は日本の農家の縮図です。この時に、農業に誇りをもち、農地を守るために身体をはって立ち上がる一人の農家の存在のいかに大きなことか、──そのように思うのです。
 新型コロナの感染拡大は、空港と農地をめぐる、半世紀にわたる成田問題にも光を当てました。
 「公共事業」とは名目だけのこと、「空港機能能強化」を掲げた農地取り上げがデタラメな需要予測のもとで進められてきたことが明るみになりました。成田空港はいまや過剰設備であり、縮小こそすれ拡張などやめるべきです。
 他方でコロナはかつてないほど深刻な世界食糧危機をもたらしました。世界最低レベルに落ち込んだ食料自給率のもとで、日本の食の安全と安定供給の危険が指摘されています。
 感染爆発は地球温暖化による気候変動と、資本主義のシステムが抱える構造的問題であって一過性に終わるものではありません。持続的な社会構造への転換が差し迫った課題となりました。人の命より企業利益を優先させる、これまでのあり方からの転換が求められています。成田も例外ではありません。

 成田空港会社は、市東さんに対して、これまでの違法の数々と不誠実を謝罪し、農地明け渡し請求を取り下げよ。
 裁判所は強制執行の停止を決定し、権利濫用に歯止めをかけよ。
 最高裁は下級審の不当判決を改めよ。
 市東さんの闘いへのご支援を呼びかけます。

2020年12月18日
市東さんの農地取り上げに反対する会

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一審ひきつぐ最低の不当判決 <速報>請求異議控訴審判決(12・17)

 主文は以下。暴力執行を認める、最低の不当判決です。

 1. 本件控訴を棄却する
 2. 強制執行停止決定を取り消す(判決までの間、有効な高裁決定)
 3. 訴訟費用は控訴人の負担
 4. この判決は仮に執行できる(仮執行宣言 最高裁の確定判決前でも執行できる)

 市東さんと弁護団は、ただちに上告手続きし、抗議の記者会見を行いました。
 同時に、確定判決前の強制執行に歯止めをかけるために、受訴裁判所(最高裁、さしあたり高裁)と執行裁判所(千葉地裁)に対して、あらためて民事執行法36条にもとづき、強制執行停止を申し立てました。

 判決内容は、一審の高瀬判決をほぼ引き継いでいます。注目された新型コロナウイルスによる新事態については、「発着回数も顕著に減少し、今後の回復の見通しも明らかでない状態」だと認めたものの、航空関係者は復活を前提にしていて、裁判所としても「現時点において、将来にわたっても復活しないと認めることはできない」として空港会社を助け上げた。

 判決は最後の最後に、「なお、本件強制執行においては、その時期、態様等について可能な限り当事者間で協議を行い、平穏、円滑に・・・実現するよう最後まで努力することの重要性はいささかなりとも失われてはいない」などと書き加えている。
 ならば、裁判所はただちに強制執行の停止を決定し、空港会社の権利濫用に歯止めをかけよ!
 空港会社は明け渡し請求を取り下げよ!
 市東さんの闘いへのご支援を訴えます。

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東峰地区と加瀬勉さんが東京高裁に要望書

 市東さんの請求異議控訴審が判決間近となるなか、成田市の東峰区住民と証人として出廷された加瀬勉さんが、東京高裁第4民事部(菅野雅之裁判長)あてに要望書を提出しました。大きな力になると思います。掲載可能とのことですのでご覧ください。

 ▼東峰地区の要望書   ダウンロード - touhoutiku_20201130.pdf

 ▼加瀬勉さんの要望書  ダウンロード - kasetsutomu_20201207.pdf

 

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<10/22最終弁論> 石原・内藤両補佐人陳述(要旨)

 請求異議控訴審、最後の口頭弁論から、石原健二、内藤光博両補佐人の陳述要旨(PDF)を添付します。
 短いものですが、お二人がこの裁判で主張・立証されてきた内容が、端的にまとめられています。

・石原補佐人
 市東さんが営む『小農・家族農業』には成田空港を上回る高い公共的価値がある」との観点からの一審判決批判
  ダウンロード - 20201022ishihara.pdf

・内藤補佐人
 本件における民事強制執行は、権利の濫用にあたり違法・違憲であるとともに過酷執行に該当する
  ダウンロード - 20201022naitou.pdf

 

 

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「どんなことがあろうと、私は天神峰の畑を耕し続けます」 市東さんの最終陳述(全文)

 私に対する強制執行は不当だと訴えた裁判の、控訴審が最後の法廷を迎えました。2006年に始まった裁判から数えると、14年にもなります。
 しかし、自分がなぜ訴えられているのか、今もまったくわかりません。
 祖父・市太郎の開墾から百年、うちは代々、地道に畑を耕してきました。空港がやって来るまで、地主との間に、なんの問題もなく畑をつくってきたんです。

・空港会社の裁判で生活が一変

 ところが、今から17年前に突然、空港会社が地主だと名乗り出ました。「畑を明け渡せ」と言い、早朝に機動隊を連れてきて、出荷場や農機具置き場など、建物全部に「公示書」を貼りました。
 畑を耕す親父に隠して、空港会社は畑を買い上げ、地代は藤﨑・岩澤に受け取らせていたのです。
 その後、計画にはまったく無かった誘導路をつくると言い出し、市道を封鎖しました。南台の畑に行くための直線道が使えなくなり、家と畑は空港に囲まれました。抗議した私は不当に逮捕されました。
 そして畑を取り上げる裁判が始まり、私の生活は一変しました。空港会社の要求は、「私に農業をやめろ」「農地を取り上げる」というものでした。先々への不安がつきまとい、まったく無縁だった裁判所にも通うことになったのです。

・小作農にも、耕し続ける権利がある!

 私は小作農ですが、たとえ小作農だとしても耕し続ける権利があります。違いますか?

 農地法は「農地と耕作者の地位を守る」ための法律です。
 一度は「土地収用法」にかけた農地を、それが失効したからといって「農地法」で空港のために取り上げる、──これは正しいやり方ですか?
 そもそも、親父に内緒で農地を売り買いすることは違法じゃないですか!

 一審判決は、「権利の安定性に一定の限界がある借地」だと書いていますが、農地はそんなものではないし、今、述べた経過からしても、とうてい承服できる判決ではありません。
 農家を守るはずの「農地法」を盾に、農地を取り上げる不当は、決して自分だけの問題ではないはずです。負けるわけにはいきません。

・「ウイズ・コロナ」の成田空港  計画中止と縮小へ

 いま、成田空港はガラガラです。家の前のB滑走路はコロナで閉鎖しました。7月に再開しましたが、回復にはほど遠く、家のそばの誘導路を使うLCCのうち2社が撤退しました。今はとても静かです。
 これが「ウイズ・コロナ」の空港です。政府は、私たちに「新しい生活様式」に変えろと言いますが、いちばん変わらなければいけないのは、空港と航空会社だと思う。

 そもそも、コロナの以前に、航空需要の予測がデタラメでした。デタラメな予測によって、「空港の機能強化」や「誘導路の直線化」「滑走路延伸と第三滑走路計画」がだされたことも、はっきりしました。拡張計画に、なんの説得力もありません。
 これでも、裁判所は、「農地取り上げの強制執行」をさせる気ですか!

・私は天神峰で畑を耕し続けます

 正しいものは正しい、嘘はつかない。私はそういう仕事をしてきたつもりです。
 親父は「空港に反対する者は正直でなければいけない」と言っていました。そうでなければ、反対運動はできないし、無農薬・有機農業もできないんです。いちばん大事なものは、人と人との信頼関係です。
 消費者は私たちを認めています。畑見学に子どもを連れて多くの家族がやってくる。「おいしいね」と言って食べてくれる。自分は安全で美味しい野菜づくりに精魂こめる。こういうつながりこそが、自分の宝です。

 私の農地が潰されたら、萩原さんと一緒に作ってきた産直も終わりです。
 私自身の生業が立たないばかりか、長い時間をかけて作ってきた消費者との関係も失ってしまいます。
 「デタラメばかりの空港に、畑を取られてたまるものか」という気持ちです。

 私は、裁判長に言いたい。

土は生きている。土を殺すな。コンクリートの下にするな。
俺の仕事と誇りを奪わないでくれ。
農業をおろそかにしてはならない。
強制執行を許可しないでほしい。

どんなことがあろうと、私は天神峰の畑を耕し続けます。

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<速報 最終弁論> 請求異議裁判の集大成 342ページの大弁論(10/22)

 昨日(22日)午後、東京高裁第4民事部(菅野雅之裁判長)で、請求異議控訴審の最終弁論が行われました。
 弁論に先立ち、冒頭、控訴人・市東孝雄さんが最後の陳述を行い、石原健二、内藤光博両補佐人が陳述しました。また、前回、証言に立った鎌倉孝夫氏から、コロナ禍の経済分析についての補充意見書が提出されました。

 市東さんは、足かけ14年にもなる裁判が自分に何をもたらしたかを語り、「小作農にも耕す権利がある」と一審高瀬判決を強く批判。コロナ禍で飛行機も飛べない空港のために、強制執行を認めることの不当を訴えました。
 そして最後に、裁判長を見据えて次のように訴えました。
 「土は生きている。土を殺すな。コンクリートの下にするな。
  俺の仕事と誇りを奪わないでくれ。
  農業をおそろかにしてはならない。
  強制執行を許可しないでほしい。
  どんなことがあろうと、私は天神峰で畑を耕し続けます」

 この農地を守る市東さんの決意に続いて、石原補佐人は農業の公共性を踏まえて家族農業の世界的趨勢を論述。衰退する日本農業における市東さんの農業の大切さを陳述しました。内藤補佐人は、強制執行の権利濫用と過酷執行性について憲法論の立場から詳細に論じました。

 弁護団の最終弁論は請求異議裁判の文字通りの集大成。342ページの大作でした。全ての論点が、一審高瀬裁判長の不当判決に対する徹底批判です。その最後は、コロナ禍によって機能不全の成田空港を詳論。それが一過性に止まるものでないと論述し、「本件農地を空港用地に転用する必要性は喪失した」「明け渡し請求権は消滅した」と断じています。
 その結語の要点は次のようなものです。
・ パンデミックによる「コロナ大不況」は世界史的な大事件。
・世界の航空需要は激減し、とりわけ成田空港の需要が元の状態に戻る可能性はない。
・この新事態の下では、誘導路を直線化して「効率的な運用」を実現するという本件農地の空港用地転用の必要性は皆無。
・本件農地を空港用地に転用する必要性が消滅した以上、給付訴訟(農地法裁判)の確定判決は死文と化しており、本件強制執行は著しく信義誠実の原則に反し、正当な権利行使の名に値しないほど不当。
・よって、本件強制執行は明白な権利濫用となり、請求異議事由が認められるので、原判決を取消して本件強制執行を許可しない旨の判決が下されるべきである。

 判決は、12月17日木曜日、午後2時。
 わずか2ヶ月後のあまりの早さ。菅野裁判長は、この日の陳述・弁論に正対・熟慮して、強制執行をやめさせる判決を下せ。

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「強制執行は農民としての人権を侵害する権利濫用。認めてはならない」 第3回請求異議控訴審 裁判報告(5)石原健二補佐人

 市東さんの証言に受けて、最後に石原補佐人が陳述した。
 石原補佐人は、全国農業協同組合中央会を経て大学で教鞭をとってきた。専門は農学で、農地と農業・食料問題を主な研究課題としてきた。その知見から、市東さんの請求を棄却した一審判決は「間違っている」と述べ、次のように陳述した。
「一審判決が犯している誤りの底には、農地 ・農業が持つ高い公共的意義への無知と軽視、小作農の権利に対する無理解と意図的とも言うべき否定的態度がある」

 そして四つの論点から、一審判決批判を展開した。

1)市東さんの有機農業と産直的協同性
 補佐人はまず、「完全無農薬」を実践する市東さんの有機農業を具体的に明らかにした。そしてその特質について
「市東さんは“農業は人の食べ物をつくる仕事だから、人に害を与えるものを作ってはならない”という信念のもとに自分の農業をやっている」
と食の安全・安心を第一とする市東さんの農業姿勢を述べた。
 そして、もう一つの特質として、産地直送の販売方法をとっていること、成田周辺から都心に及ぶその取り組みを「産直型協同性」として高く評価した。
「この産直方式には、大手資本の流通支配によって失われた、人と人との関係を回復するという意義がある」
「小規模農家を切り捨ててきた間違った農政とたたかって、本来あるべき日本の農業を取り戻し、生き抜こうとしている」
 そして、
「長年の農業問題に携わってきた経験から、新自由主義政策によって生まれた社会的格差を克服し、地球規模の環境破壊を食い止める道は、 “人の命を育む農業実践”にあると確信している」と陳述した。

2)今も変わらない、農地法による耕作者保護の強固な原則
 では、小作地を耕す農民の地位と権利はどのようなものなのか。
 一審判決は、市東さんの小作地を「権利の安定性に一定の限界がある借地」と書いている。農地を土地一般に解消し、小作耕作権を徹底的に弱め落としめた。
 市東さんは証言で、「たとえ小作だとしても耕す権利がある。『国策』だといってそれを奪うことに怒りを感じる」と強く抗議している。
 石原補佐人は、まず、日本の近代的土地所有の確立過程を詳しく話した。
「明治以降、敗戦まで、日本の農業は、経営規模の小さな自作農的土地所有制度を基底とし、地主と小作農を両極とする半封建的小作関係が支配した。この過小農制度と高率物納を基礎におく半封建的小作農制度こそ当時の日本農業の特性」
「“耕す者に土地を”の農地改革は、日本では敗戦と戦後民主主義によって現実化し、農地法に結実した。耕作者の地位の安定が歴史的に位置づけられた」
「農地法は、幾度かの法改正がなされてきたが、「小作農」とりわけ「残存小作」の保護条項の核心は変わっていない」といって、1970年代以降の列島改造と財界が求めてきた土地法制の改悪においても、耕作者の地位の安定をはかる機能は保持されていることを明らかにした。
 そして、一審判決が「権利の安定性に一定の限界がある借地」という間違った認定のもとで行なった損失補償について、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」に反するものであると指摘した。

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