裁判

「どんなことがあろうと、私は天神峰の畑を耕し続けます」 市東さんの最終陳述(全文)

 私に対する強制執行は不当だと訴えた裁判の、控訴審が最後の法廷を迎えました。2006年に始まった裁判から数えると、14年にもなります。
 しかし、自分がなぜ訴えられているのか、今もまったくわかりません。
 祖父・市太郎の開墾から百年、うちは代々、地道に畑を耕してきました。空港がやって来るまで、地主との間に、なんの問題もなく畑をつくってきたんです。

・空港会社の裁判で生活が一変

 ところが、今から17年前に突然、空港会社が地主だと名乗り出ました。「畑を明け渡せ」と言い、早朝に機動隊を連れてきて、出荷場や農機具置き場など、建物全部に「公示書」を貼りました。
 畑を耕す親父に隠して、空港会社は畑を買い上げ、地代は藤﨑・岩澤に受け取らせていたのです。
 その後、計画にはまったく無かった誘導路をつくると言い出し、市道を封鎖しました。南台の畑に行くための直線道が使えなくなり、家と畑は空港に囲まれました。抗議した私は不当に逮捕されました。
 そして畑を取り上げる裁判が始まり、私の生活は一変しました。空港会社の要求は、「私に農業をやめろ」「農地を取り上げる」というものでした。先々への不安がつきまとい、まったく無縁だった裁判所にも通うことになったのです。

・小作農にも、耕し続ける権利がある!

 私は小作農ですが、たとえ小作農だとしても耕し続ける権利があります。違いますか?

 農地法は「農地と耕作者の地位を守る」ための法律です。
 一度は「土地収用法」にかけた農地を、それが失効したからといって「農地法」で空港のために取り上げる、──これは正しいやり方ですか?
 そもそも、親父に内緒で農地を売り買いすることは違法じゃないですか!

 一審判決は、「権利の安定性に一定の限界がある借地」だと書いていますが、農地はそんなものではないし、今、述べた経過からしても、とうてい承服できる判決ではありません。
 農家を守るはずの「農地法」を盾に、農地を取り上げる不当は、決して自分だけの問題ではないはずです。負けるわけにはいきません。

・「ウイズ・コロナ」の成田空港  計画中止と縮小へ

 いま、成田空港はガラガラです。家の前のB滑走路はコロナで閉鎖しました。7月に再開しましたが、回復にはほど遠く、家のそばの誘導路を使うLCCのうち2社が撤退しました。今はとても静かです。
 これが「ウイズ・コロナ」の空港です。政府は、私たちに「新しい生活様式」に変えろと言いますが、いちばん変わらなければいけないのは、空港と航空会社だと思う。

 そもそも、コロナの以前に、航空需要の予測がデタラメでした。デタラメな予測によって、「空港の機能強化」や「誘導路の直線化」「滑走路延伸と第三滑走路計画」がだされたことも、はっきりしました。拡張計画に、なんの説得力もありません。
 これでも、裁判所は、「農地取り上げの強制執行」をさせる気ですか!

・私は天神峰で畑を耕し続けます

 正しいものは正しい、嘘はつかない。私はそういう仕事をしてきたつもりです。
 親父は「空港に反対する者は正直でなければいけない」と言っていました。そうでなければ、反対運動はできないし、無農薬・有機農業もできないんです。いちばん大事なものは、人と人との信頼関係です。
 消費者は私たちを認めています。畑見学に子どもを連れて多くの家族がやってくる。「おいしいね」と言って食べてくれる。自分は安全で美味しい野菜づくりに精魂こめる。こういうつながりこそが、自分の宝です。

 私の農地が潰されたら、萩原さんと一緒に作ってきた産直も終わりです。
 私自身の生業が立たないばかりか、長い時間をかけて作ってきた消費者との関係も失ってしまいます。
 「デタラメばかりの空港に、畑を取られてたまるものか」という気持ちです。

 私は、裁判長に言いたい。

土は生きている。土を殺すな。コンクリートの下にするな。
俺の仕事と誇りを奪わないでくれ。
農業をおろそかにしてはならない。
強制執行を許可しないでほしい。

どんなことがあろうと、私は天神峰の畑を耕し続けます。

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<速報 最終弁論> 請求異議裁判の集大成 342ページの大弁論(10/22)

 昨日(22日)午後、東京高裁第4民事部(菅野雅之裁判長)で、請求異議控訴審の最終弁論が行われました。
 弁論に先立ち、冒頭、控訴人・市東孝雄さんが最後の陳述を行い、石原健二、内藤光博両補佐人が陳述しました。また、前回、証言に立った鎌倉孝夫氏から、コロナ禍の経済分析についての補充意見書が提出されました。

 市東さんは、足かけ14年にもなる裁判が自分に何をもたらしたかを語り、「小作農にも耕す権利がある」と一審高瀬判決を強く批判。コロナ禍で飛行機も飛べない空港のために、強制執行を認めることの不当を訴えました。
 そして最後に、裁判長を見据えて次のように訴えました。
 「土は生きている。土を殺すな。コンクリートの下にするな。
  俺の仕事と誇りを奪わないでくれ。
  農業をおそろかにしてはならない。
  強制執行を許可しないでほしい。
  どんなことがあろうと、私は天神峰で畑を耕し続けます」

 この農地を守る市東さんの決意に続いて、石原補佐人は農業の公共性を踏まえて家族農業の世界的趨勢を論述。衰退する日本農業における市東さんの農業の大切さを陳述しました。内藤補佐人は、強制執行の権利濫用と過酷執行性について憲法論の立場から詳細に論じました。

 弁護団の最終弁論は請求異議裁判の文字通りの集大成。342ページの大作でした。全ての論点が、一審高瀬裁判長の不当判決に対する徹底批判です。その最後は、コロナ禍によって機能不全の成田空港を詳論。それが一過性に止まるものでないと論述し、「本件農地を空港用地に転用する必要性は喪失した」「明け渡し請求権は消滅した」と断じています。
 その結語の要点は次のようなものです。
・ パンデミックによる「コロナ大不況」は世界史的な大事件。
・世界の航空需要は激減し、とりわけ成田空港の需要が元の状態に戻る可能性はない。
・この新事態の下では、誘導路を直線化して「効率的な運用」を実現するという本件農地の空港用地転用の必要性は皆無。
・本件農地を空港用地に転用する必要性が消滅した以上、給付訴訟(農地法裁判)の確定判決は死文と化しており、本件強制執行は著しく信義誠実の原則に反し、正当な権利行使の名に値しないほど不当。
・よって、本件強制執行は明白な権利濫用となり、請求異議事由が認められるので、原判決を取消して本件強制執行を許可しない旨の判決が下されるべきである。

 判決は、12月17日木曜日、午後2時。
 わずか2ヶ月後のあまりの早さ。菅野裁判長は、この日の陳述・弁論に正対・熟慮して、強制執行をやめさせる判決を下せ。

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「強制執行は農民としての人権を侵害する権利濫用。認めてはならない」 第3回請求異議控訴審 裁判報告(5)石原健二補佐人

 市東さんの証言に受けて、最後に石原補佐人が陳述した。
 石原補佐人は、全国農業協同組合中央会を経て大学で教鞭をとってきた。専門は農学で、農地と農業・食料問題を主な研究課題としてきた。その知見から、市東さんの請求を棄却した一審判決は「間違っている」と述べ、次のように陳述した。
「一審判決が犯している誤りの底には、農地 ・農業が持つ高い公共的意義への無知と軽視、小作農の権利に対する無理解と意図的とも言うべき否定的態度がある」

 そして四つの論点から、一審判決批判を展開した。

1)市東さんの有機農業と産直的協同性
 補佐人はまず、「完全無農薬」を実践する市東さんの有機農業を具体的に明らかにした。そしてその特質について
「市東さんは“農業は人の食べ物をつくる仕事だから、人に害を与えるものを作ってはならない”という信念のもとに自分の農業をやっている」
と食の安全・安心を第一とする市東さんの農業姿勢を述べた。
 そして、もう一つの特質として、産地直送の販売方法をとっていること、成田周辺から都心に及ぶその取り組みを「産直型協同性」として高く評価した。
「この産直方式には、大手資本の流通支配によって失われた、人と人との関係を回復するという意義がある」
「小規模農家を切り捨ててきた間違った農政とたたかって、本来あるべき日本の農業を取り戻し、生き抜こうとしている」
 そして、
「長年の農業問題に携わってきた経験から、新自由主義政策によって生まれた社会的格差を克服し、地球規模の環境破壊を食い止める道は、 “人の命を育む農業実践”にあると確信している」と陳述した。

2)今も変わらない、農地法による耕作者保護の強固な原則
 では、小作地を耕す農民の地位と権利はどのようなものなのか。
 一審判決は、市東さんの小作地を「権利の安定性に一定の限界がある借地」と書いている。農地を土地一般に解消し、小作耕作権を徹底的に弱め落としめた。
 市東さんは証言で、「たとえ小作だとしても耕す権利がある。『国策』だといってそれを奪うことに怒りを感じる」と強く抗議している。
 石原補佐人は、まず、日本の近代的土地所有の確立過程を詳しく話した。
「明治以降、敗戦まで、日本の農業は、経営規模の小さな自作農的土地所有制度を基底とし、地主と小作農を両極とする半封建的小作関係が支配した。この過小農制度と高率物納を基礎におく半封建的小作農制度こそ当時の日本農業の特性」
「“耕す者に土地を”の農地改革は、日本では敗戦と戦後民主主義によって現実化し、農地法に結実した。耕作者の地位の安定が歴史的に位置づけられた」
「農地法は、幾度かの法改正がなされてきたが、「小作農」とりわけ「残存小作」の保護条項の核心は変わっていない」といって、1970年代以降の列島改造と財界が求めてきた土地法制の改悪においても、耕作者の地位の安定をはかる機能は保持されていることを明らかにした。
 そして、一審判決が「権利の安定性に一定の限界がある借地」という間違った認定のもとで行なった損失補償について、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」に反するものであると指摘した。

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「私の畑のあの土でないと、私の野菜はできません」──第3回請求異議控訴審 裁判報告(4)市東孝雄さん本人尋問

 いよいよ市東孝雄さんの証言。浅野弁護士が尋問した。
 最初に、ゴールデンウイークでも発着98%減の状況を訪ねと、
「ほんとに静かでした。これが本来の姿だと感じました。鳥のさえずりや風の音、排ガスはなく、じつに気持ち良かったです」。
 7月22日に供用を再開しての状況については、
「格安航空のピーチとジェットスターが飛んでいるけど、前ほどのうるささでない。A滑走路で間に合うのじゃないかと思う。それでも使うのは嫌がらせじゃないかと思います」。
 空港会社の田村社長が6月29日の会見で「コロナは長く続くと覚悟している。しかし機能強化は着実に進めていく」と話したことについては、
「地元のことをまったく考えてない。今の状態でやれているのだから、第三滑走路もいらなし、機能強化は論外だと思う」。
 7月27日、騒音下住民が参議院議員会館で国交省と空港会社に対して、機能強化の撤回を求めたが、国は「需要減は中長期的には解消する」としてゆずらなかた。これについてどう思うか聞かれて、
「いくら住民がやめるように陳情しても結果ありき、『国策』だからやるという。この態度は54年前から変わっていない」と証言した。

●南台・天神峰の耕作地と産直出荷
 南台の農地の一部を「不法耕作」だと決めつけて明け渡しを求めている空港会社に対しては、「その場所(41−9番地)は一度も耕したことがない」と言って、写真撮影報告書をもとにして畑の様子と現在の被害を説明した。
 自宅と南台農地の間は、成田市が管理する約500メートルの直線道だった。一日120台の車が通行していたが、B’滑走路の誘導路建設で一方的に廃道にされた。このため、大きく迂回して交通量の激しい道を使って畑に行くことを強いられている。抗議した市東さんが不当逮捕されたことも証言した。
 さらに、取り上げ対象の天神峰農地を説明。ここには畑とともに作業場や倉庫、作付け会議などを行う別棟がある。育苗のためのビニールハウスがあり、写真には育苗ポットで発芽したブロッコリーとキャベツが写り、定植の時期を待つ様子が示された。
 「これらの設備は必須ですか」との問いに対して、「これらが無くては農業はできません」。
「家の至近にこれらの設備があるのはなぜか?」という問いには、「これらは畑と一体で、育苗の水やりや生育を見るためにも家の側にないとだめ」だと答えた。
 さらに尋問は、「三里塚産直の会」について。市東さんと萩原富夫さの2軒が生産者となって消費者と提携し信頼関係を築いている様子が伝わってきた。
「採れたばかりの旬の野菜を消費者のみなさんに食べてもらう。一年を通じて、50〜60品目を作る。それが歓び」だと答え、手間のかかる多品目生産も年間を通して消費者家族の野菜を賄うという産直の基本的な考え方に基づくものであることを明らかにした。
 消費者に届ける野菜ケースには「野菜だより」を入れ、そこには保存方法から調理のレシピが書かれており、きめ細かい提携関係が作られていることが明らかになった。

           ▶︎▶︎▶︎続きは追記のページでお読みください▶︎▶︎▶︎

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【上】天神峰農地の略図と畑の苦瓜 【下】南台の畑の全景

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「新型コロナはグローバル資本主義の構造問題 空港機能強化など論外」 ──第3回請求異議控訴審 裁判報告(2)鎌倉孝夫証人

 鎌倉証人の立証趣旨は経済学の立場からの、新型コロナによる航空市場の崩壊とその構造分析、「空港機能強化」のための農地取り上げの非を明らかにするもの。これは、弁論で主張した「農地転用目的の喪失」を、専門家の証言を通して立証するものだった。
 一瀬弁護士が次の論点から尋問した。
 ①「コロナ不況」の経済分析、②航空市場の崩壊と成田空港の実態、③その構造的要因、④需要予測の破綻と「空港機能強化」、成田空港会社の経営破綻
 以下はそのエッセンスと象徴的やりとりです。

①「コロナ不況」の経済分析
 新型コロナがもたらした世界的不況について、「従来の不況とどこが違うのか」と問われて、鎌倉証人は次のように証言した。
「たとえばリーマンショックは証券バブルの崩壊に始まり企業収益が大幅に落ち込んだ。今回の不況は人命に関わり、人間関係に響く不況。ここがこれまでとは決定的に違います。人間の協同関係の遮断は、人命と人間社会の存続に関わる危機として捉えるべきです」
 証言は、医療、福祉、教育などの公共部門に対するコロナの影響から、ワクチン開発競争に現れた製薬会社(多国籍企業)の利益追求、さらにテレワークに象徴される労働問題に及んだ。ここでも一貫した証人の考えは、「自然と人間のあるべき関係と人間社会の協同性」について。そこが遮断されることへの危機感だった。

②航空市場の崩壊と成田空港
 次にコロナが直撃した航空市場の実態について。鎌倉証人は、弁護人が読み上げる世界の航空会社の業績悪化に注釈を加えた上で、
「コロナ以前に、航空バブルが発生していた事実が重要。それがコロナで現れた」と指摘し、次のように証言した。
「新自由主義による弱肉強食が競争戦と航空需要を生み出しました。コロナで崩れて、減便とリストラで対応しているが、これは経営サイドの対応策。解決にならず、同じことがまた繰り返されます」
 インバウンド(訪日旅客)の9割以上が観光目的という現状については、
「意図的にあおられた需要である以上、航空輸送を必要とする基盤が何かを問い、政策を転換しないと繰り返す」と指摘して、成田B'滑走路閉鎖の底にある根本問題を明らかにした。

③その構造的要因
 では、「低落した航空需要は戻るのでしょうか?」という尋問に対して、鎌倉証人は次のように答えている。
「グローバル資本主義が新型コロナのパンデミックをもたらしました。乱開発が自然を破壊し、そこに生息するウイルスが人間に取り憑いた。その感染症がグローバルな市場を通して世界に拡散しました。そのグローバリズムを主導しているのは株価至上主義の金融資本。その在り方が問題の根源です」
「国際関係を取り結ぶのが航空需要であるとすれば、それがコロナで断たれてしまった。この状況を『三密』で回復できるでしょうか? 人間の生存と生活に基盤を置くものへと転換しなければ、回復はしません」
 新型コロナの発生とパンデミック、そこからくる不況は、新自由主義・グローバリズムが抱える構造的な問題であり、そのシステムの転換以外に、真の解決の道がないことが明らかにされた。

④需要予測の破綻と「空港機能強化」、成田空港会社の経営破綻
 さらに一瀬弁護士が、「首都圏空港機能強化」策の根拠とされた、国交省の「2013年航空需要予測」(2020年の羽田・成田の航空需要を、国際・国内で発着回数70万回、旅客数1億1000万人〜1億2000万人と打ち出した)について、それが予測の半分にも達しない現実を示して尋問した。
「驚くべきこと。とんでもない。何を根拠にしたのでしょうか」
「これは“機能強化の根拠づくり”。需要があっての機能強化でなく、機能を強化すれば需要が拡大すると夢想したのだから本末転倒です」
「これをまだ続ける空港会社は間違っている」
と語気を強めて批判した。
 今期「数百億円規模の赤字」となることを認める田村成田空港会社社長は、この期に及んでなお、「機能強化を推進する」意向を示している。それに対して
「希望に過ぎず根拠がない。すでに過剰投資、なんの機能も果たせないのに従来通りとは大いに疑問。これによってもたらされることはといえば、人間存在の破壊です」

 そして最後に「経済学の立場から言えば、弱肉強食の新自由主義が人間の生存基盤を破壊している。成田の空港拡張もそうです。コロナの下での資本の支配と破壊を食い止め、いかに再生させるか。市東さんの農地はその意味で重要であり、負けるわけにはいかない」と結んだ。

 次回は午後の法廷。平野靖識さんの証言です。

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「新型コロナで土地の転用目的は消滅し、強制執行の根拠はなくなった」──第3回請求異議控訴審 裁判報告(1)弁論要旨

 弁護団は準備書面(4)を提出し、冒頭これを陳述した。
その主旨は
①新型コロナで航空市場が縮小し、成田の過剰設備がB’滑走路閉鎖で露呈した
②これにより「空港機能強化」に根拠はなく、本件土地の転用目的は消滅した
③よって農地取り上げの強制執行は正当な権利の行使と言えず、許可すべきでない
というもの。
 これは請求異議裁判の核心をズバリ突いている。
 航空需要の壊滅状態とB’滑走路の閉鎖は口頭弁論終結後の新事態である。請求異議の事由にあたることが明白であるばかりか、市東さんの農地の転用目的の消滅を意味し、明け渡し請求自体が根拠を失い、その強制執行は不当であり不許可とすべきと訴えた。

●脆弱な空港経営をコロナが直撃
 この準備書面は49頁に及ぶ。法廷では遠藤弁護士によって要点が読み上げられた。
 その第1は「成田空港B’滑走路の閉鎖と運用再開の実態」について。
 成田空港は、コロナ以前から運用実績が低迷しLCC(格安航空)に後退。テナントに収益をたよる脆弱な体質だった。そこにパンデミックが直撃し、インバウンド(訪日旅客)の9割を観光に頼る成田の航空需要は壊滅的状態に。B’滑走路が閉鎖され一部ターミナルも閉鎖になった。8月に入って運用を再開したが、それはLCCの国内線再開に合わせたものにすぎないことが、運用実績によって明らかになった。

●決して元に戻らない──現れた構造的な大問題
 では、この事態は一過性のもので時が過ぎれば元にもどるか? 決してそうではないことを展開したのが、準備書面の第2である。
 航空不況は日本だけではない。世界各国の空港・航空産業が低迷し倒産し、株価が暴落している。これが長期化することがIATA(国際航空運輸協会)をはじめ航空業界が予測する。
 その根拠は、現代社会が抱える構造的な問題である。
 急速かつ世界的なパンデミックを生み出した根源的な要因は、現代資本主義のグローバリズムと無秩序な世界的乱開発と自然破壊にある。森に潜む「未知のウイルス」が活動の接点で人にとりつき、その感染症がグローバル経済を通して瞬く間に世界中に拡散した。しかもウイルスは年々進化していることが、各種の専門家によって指摘されている。
 航空運輸はその感染ルート。感染を遮断するためには制約が避けられない。
 こうした構造的な問題がある以上、日本と世界が問われているのは、これまでのあり方からからの転換である。グリーンリカバリー(持続可能な経済体制への転換)が世界的に叫ばれている。
 この現実を前にして、成田空港の「機能強化」は論外というべきだ。無理と無駄の積み重ねであり、成田空港会社の収益予測からして不可能である。いま、成田空港にとって必要なのは、虚構の航空需要を根拠にした「機能強化」からの転換である。

●農地取り上げの強制執行は権利濫用 不許可とすべき
 準備書面は、以上の展開の上にたって、第3で、市東さんの農地の「空港転用目的の喪失」と「明け渡し請求権の消滅」を明らかにした。
 次のように書いている。
「パンデミックで国際線の航空需要が消滅し、成田空港に関する機能強化の必要性が全くなくなった」
「この転用目的の喪失は、当然明け渡し請求権の消滅を意味し、請求異議事由にあたる」「転用目的の喪失の中で、確定判決に基づく強制執行は『著しく信義誠実の原則に反し、正当な権利行使の名に値しないほど不当』であり、強制執行は権利濫用であり認められない」
 よって農地取り上げの強制執行を、許可すべきでないと結論づけた。

 この弁論を裏付ける証言が、続く鎌倉孝夫氏の証人尋問。鎌倉証言のエッセンスは次回に。

 

▼準備書面(4)全文をご覧ください →     ダウンロード - js4_s.pdf

 

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菅野裁判長が年度内結審を決定! 審理尽くさぬ暴挙 〔1・16請求異議控訴審〕

 1月16日、東京高裁で請求異議の第2回控訴審が開かれた。菅野雅之裁判長(第4民事部)は、次回3月25日と27日の2期日をもって、審理を打ち切る強行方針を打ち出した。
 第1回裁判で弁護団は、空港会社が釈明要求に答えず、根拠を示すことなく主張を繰り返す裁判姿勢を強く批判。控訴審ではかみあった論議を保障する訴訟指揮を強く求めた。これに対して、菅野裁判長は「主張を裏付けることは物事の大原則」とこれに応えている。だが、この日の法廷では一転して審理打ち切り強行方針の暴挙である。
 この年度内結審の意向は、昨年末の弁護団折衝で表明されている。これに対して弁護団は、かみあった議論のための求釈明書、求釈明補充書を年末年始と相次ぎ提出。さらに憲法論から捉えかえした準備書面を提出して審理を尽くすことを要求し、補佐人陳述・証言を準備してこの日の法廷に臨んだ。

 裁判は冒頭、内藤光博教授(憲法論)が補佐人として陳述し、過酷執行・権利濫用を否定した一審判決を徹底的に批判した。
 続いて弁護団が、求釈明と準備書面の要旨を陳述し、あらためて釈明をせずに逃げる空港会社の不誠実を明らかにした。
 他方、空港会社は27頁(滅多にないことだ!)の釈明書を提出した。これは従前の主張と釈明の繰り返しにすぎないものだが、注目すべきは、シンポ・円卓会議における「強制的手段の放棄」の公約についての踏み込んだ釈明である。
 「私法上の権利につき民事裁判による確定や強制執行による実現を求めることをしないことを約したものではない」と書いている。
 つまり、この公約は土地収用法による代執行のことを言っているのであって、市東さんの小作耕作権を取り上げる民事強制執行は、この公約から外れるというのである。
 これまで空港会社は、「話し合いが頓挫した場合のことまで約していない」などと根拠なく判示した多見谷判決にならって抜け道を探ってきたが、ここにきて民事強制執行も対象外だと言い出したのだ。いったいどうしてこんな解釈が成り立つのか!
 だとすれば「頓挫」論を含めて、その主張の根拠をしめし、立証する責任が空港会社にある。弁護団は菅野裁判長に対して、これを促す訴訟指揮を求めたが、裁判長は「促すのは適切ではない」と言い張って空港会社の盾となった。
 傍聴席から怒りと抗議の声が上がる中、菅野裁判長は次回3月25日に市東孝雄さんと平野靖識さんの証人尋問、石原健二(農業経済)さんの補佐人陳述を行うこと、さらに弁護団が強く要求した最終弁論を27日に行うことを告げて、逃げるように退廷した。

 次回期日は、3月25日午後2時、東京高裁102号法廷。
 東京高裁・菅野裁判長による、審理拒否・結審強行を許さない行動と傍聴闘争を!!

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弁護団が新証拠を提出! 空港会社の誤認は明らか  2・18耕作権裁判

419_shinyoujyu  2月18日、千葉地裁民事第2部(内田裁判長)で、耕作権裁判が開かれた。この裁判で、弁護団は南台農地の位置に関する決定的証拠を提出した。それが左に掲載した実測平面図。空港会社が市東さんの賃借地と主張する「南台41-9」には、石橋政次宅の屋敷林である針葉樹の記号が付けられている。この土地は、市東さんの賃借地ではなく、石橋氏が借りていたことを示す、動かぬ証拠だ。
 この平面図は、工事実施計画の行政訴訟(1967年提訴、すでに終結)で運輸大臣が証拠提出したもの。1967年10月に空中写真が撮影され、同年12月に実地測量して作成された。
 市東家は、「南台41-9」の土地を賃借しておらず、耕作したことがない。市東さんは裁判当初からこのことを、さまざまな証拠をもって訴えてきたが、空港会社は「市東賃借地」の主張を押し通し、耕作権裁判はもちろん、最高裁で確定した行訴・農地法裁判(請求異議裁判の基本事件)でも、それによって立論してきた。新証拠は、市東さんの耕作が「不法耕作」でないばかりか、明け渡し裁判でありながら肝心要の対象位置が間違っていることを、あらためて突きつけている。
 耕作権裁判は提訴から13年にもなるが、いまだ地裁で争われている。それは空港会社が南台農地の貸借場所等についての書類を隠し続けているからである。空港会社は秘密裏に行った買収交渉の記録などすべての書類を開示せよ!
 この日の裁判では、文書提出命令を促す上申書を提出した。裁判所はインカメラによって判断することになっているが、弁護団は、その詳細について法廷で明らかにすべきだと迫った。
 さらに、航空写真解析や時効取得に関する専門家を含む5名の学者・専門家による立証プランを具体的に示した。
 次回は、5月13日(月)、次々回は7月29日(月)、いずれも10時30分開廷。

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再度、強制執行停止を決定  千葉地裁

 21日午後、千葉地裁民事第4部は、判決直後に行った市東さんの執行停止申し立てを、認める決定を行なった。

  これは20日の不当判決で、執行停止決定が取り消されたことに対する措置。この日、弁護団は、控訴手続きの間隙を縫って強行しかねない空港会社の悪質さを疎明する書面を提出し、決定を迫った。
 この再度の決定により、高裁に係属するまでの空白期間に強制執行を強行しようという、空港会社の卑劣な策謀は断たれることとなった。

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最低最悪の不当判決!  速報 請求異議判決(12・20)

 判決は想定されたなかでも最低最悪の内容だった。主文のなかみは以下。

 ①強制執行を許さないとの判決を求めた市東さんの訴えはいずれも却下
 ②判決までの間、執行を停止するとした裁判所の決定を取り消す
 ③訴訟費用は原告負担
 ④この判決は仮に執行できる

 市東さんと弁護団は直ちに控訴し、併せて、「急迫の事態」を理由とする執行停止をあらためて千葉地裁に申し立てた。
 この新たな申し立ては地裁民事第4部に係属し、ただちに面接となったが、その場で裁判所は「高裁に係属するここ一か月余のうちにも空港会社が強制執行しかねないとする疎明を、補充書として提出するよう要求。明21日、午後2時15分から再度、面接することを確認して終わった。

 判決は、いちばんの争点である「強制執行権の放棄ないし不執行の合意」(強制的手段放棄の公約のこと)について、小泉さんの和解を無視して「口頭弁論終結前の事由」などと言いなし、事実を偽造した悪名高い多見谷判決を踏襲して「強制執行権の放棄ないし不執行の合意は認められない」と切り捨てている。
 また、権利濫用の主張については、上記デタラメな判断に加え、「農地を転用して空港にすることには公共性がある」から、「強制執行は権利濫用ではない」と決めつけている。対極にある農業の公共的役割や営農権については「採用しない」というのみなのだ。
 いったいこの二年間で行われた、重厚な論述、歴史証言、補佐人陳述の何を聞いていたのかと思わせるスカスカの判決内容だ。要するに何も見ず、何も聞かず、空港会社に肩入れありきで頭を組み立てているとしか思えない。

 〝すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される〟(憲法76条3項)
 高瀬裁判長は、この裁判の折衝の場で、何を思ってか「自分は小役人ですから・・」と、驚きの言葉を発している。いかにも、己の職責もわきまえずに権力を手にした小役人らしい判決というべきものだ。

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