裁判

弁護団の最終弁論第2部  9・27請求異議裁判報告(3)

 第2部は、強制執行がまさに「権利濫用」であることの具体的展開である。
 ここの論点は便宜的に第1部からの通し番号なので、第5がその総論となった。傍聴していると、なぜ弁論の途中に「総論」が入るのかと思わされるが、ここから第2部が始まるのだった。

第5総論 本件強制執行権行使は、空港会社の「権利濫用」「信義則違反」だから裁判所は許可すべきではない
 1993年5月23日、第15回成田空港シンポジウムで、隅谷調査団は「平行滑走路の用地の取得のために、あらゆる意味で強制的手段が用いられてはならず、あくまでも話合いにより解決されなければならない」という最終所見を公表した。空港公団(現会社)、国、千葉県が全面的に受け入れることを公的に誓約した。
 ここに「強制執行権の放棄」もしくは「不執行の合意」が成立した。空港会社の強制執行権の行使の権利濫用は被告の公的誓約を裏切って強制されようとしているものであり権利濫用性は一層明確である。
 そして権利濫用の5つの類型を提示して、これにことごとく該当することを明らかにした。
 自己の以前の行為に矛盾・抵触する(最終意見遵守の公約破棄)
 過酷な執行(営農基盤の破壊と人生を奪う。よねさんとの類似性)
 加害目的の執行(見せしめ執行)
 社会正義に反する(生存的基本権、営農権など)
 不誠実な手段によって取得した権利の行使(秘密売買による所有権の移動など)

 この総論に続いて、権利濫用を明らかにする各論が展開された。
第6 市東さんの有機農業と産直型協同性を破壊し回復し難い損害を強制する
 ここでは、空港周辺地域で発生・発展してきた有機農業と市東さんたち三里塚産直の会のシステムと歴史が詳細に展開された。市東さんの農地と農業は長い年月と不断の努力によって作られたものであること、廃業の危機に瀕する日本の農家・農業の再生展望からしても潰してはならないことが、石原健二氏(農業経済学)の分析・意見を元に展開された。
 強制執行による有機農業と産直型協同性の破壊は、市東さんの人生そのものの否定であり、「へ」の字誘導路の手直し目的ということからしても著しく均衡を欠く超過酷執行であり権利濫用であって認めてはならないと結論づけた。

第7 憲法が保障する「営農権」「生存権的財産権」を侵害する過酷執行
 内藤光博教授(憲法学)が意見陳述した理論の実践適用である。まず1961年農業基本法前文における農業の社会的役割をふまえて、農業を営む権利としての「営農権」を憲法的人権に位置づけ、すでに定説となっている「生存権的財産権」としての農地をもうひとつの根拠として、市東さんの農業と農地の社会的意義と役割を明確にした。
 この営農権を奪う強制執行は、基本的人権としての「職業選択の自由」「勤労の権利および自由」さらに「個人の尊厳」の否定につながることを明らかにした。
 また、人の食料供給に不可欠な農業は、憲法前文の「欠乏からの自由」(平和的生存権)と25条生存権と深くかかわり、「憲法的価値」「憲法的公共性」を持つことを明確にして、市東さんの農業がその保障を強く受けるべきことを鮮明にした。

第8 小泉よねさん行政代執行と同様の見せしめ、かつ苛酷な執行
 ここでは、小泉英政・加瀬勉両証人の証言と、成田空港シンポジウムで上映された小川プロの未公開フィルム、北原鉱治反対同盟事務局長の著作から、よねさんの代執行の過酷執行性を浮き彫りにし、市東さんの強制執行との同質性を明らかにした。
 強制執行は執行される者の「全人格否定」であり「死刑宣告」を意味するものであって、何ものをもっても補償できないことを明らかにした。

第9 対象農地の収奪における権利濫用
 ここは第7と対をなす「営農権」の具体的論述である。収奪対象としての有機の農地が、いかなる労働の営為によって作られ維持されているかを詳述して、他に変えるものができないことを鮮明にした。有機農業と産直型協同性の形成とその社会的意義について明確にした。

第10 「への字」誘導路は、会社自ら計画変更し、国から安全性の許可を得たものであり、その解消を求めて強制執行を行うことは信義則に反する
 空港会社が強制執行の理由としている「へ」の字誘導路の解消(直線化)について、さまざまな角度から検討したうえで、以下、結論づけた。
 すなわち、空港会社は、用地問題を解決できず、当初計画を変更してB’滑走路と「へ」の字誘導路を計画し、「運用上支障なし」「安全」として国の認可を取り付けた。そして供用を開始して、騒音と事故の危険で追い出しを図ったが、叶わぬとなると、こんどは「空港機能の強化」をかかげて「へ」の字の解消へとふたたび計画変更して、農地を取り上げようとしている。ここに執行の本質がある。信義則に反して権利の濫用にあたり、到底認められない。

第11 成田空港の国際航空需要の著しく減少し公共性は認めらず、強制執行に必要性・緊急性はない
 鎌倉孝夫氏(経済学)の経済分析からの展開。旅客数と貨物取扱量のいずれもピークを打ち下落を続けており、運用実績は著しく低迷している。これによって余剰設備を抱えながらも、「空港の機能強化」を叫ぶのは、「成田空港の地位の低下」の現実にその根拠がある。
 いまや空港会社は本業の航空系収入ではなく、テナントやリテール事業に走って商業資本と化している。他方、空港騒音や周辺住民の生活破壊は「空港機能強化」によってさらに加速する。空港会社は利潤追求を行動原理として公共性を喪失している。
 人が平和のうちに生活・生存することこそがもっとも重要な人間的権利である。それを保障することは経済学の規定からしても憲法原理に照らしても最優先の公共目的である。成田空港は公共的に無価値であるばかりか、日々公共性を破壊している。

第12 南台の「GSE、ULD置場」は虚構の計画に基づくものであることは、いまや明白であり、強制執行は不必要かつ違法
 南台の空港告示区域外の土地に対する強制執行が、虚構の計画によるものであることは戸井健司(当時公団職員)証言で証明された。のみならず、ターミナルに隣接する取香地区にはその当時からGSE、ULDの大規模計画が存在し、すでにその建設工事は完成し供用されている。
 南田の転用計画は、千葉県知事から賃貸農地の解約許可処分を掠め取るための虚構であり、許可の騙し取りだった。これは明白に、権利濫用の類型(不誠実な手段によって取得した権利の行使)に該当する。
 強制執行の必要性・緊急性は、空港会社によって何ひとつ立証されていない。南台では正当な耕作地への工作妨害と破壊、天神峰では建物など営農手段の全てを破壊する。そうすることで生計の資を奪い、農民としての死を強制し野垂れ死にを強いる強制執行は悪質この上なく、加害意思、加害目的を伴う権利の濫用的行使であり、許容される余地はない。

|

弁護団の最終弁論第1部  9・27請求異議裁判報告(2)

 最終弁論のために弁護団がまとめた準備書面は、231ページの分厚いものだが、それは大きく<2部= 12論点>で構成されている。
 第1部は、請求異議の提起の要件である口頭弁論終結後に発生した事態について。第2部は、強制執行がまさに権利濫用であることの具体的事由である。
 弁護団はこれらによって、市東さんに対する強制執行が、71年第二次強制代執行(小泉よねさん強制収用)と同質の過酷執行であり、空港会社の権利濫用であって社会正義に照らして許されず、執行停止を求めたのだ。
 今回は、第1部の4つの論点のポイントを掲載。

第1 執行段階で具体化した「強制的手段放棄の公約」
 口頭弁論終結後に発生したことで、弁護団が第1にあげたのは、「強制執行権の放棄ないし不執行の合意」の発生である。これは「強制的手段放棄の公約」のことだが、現実に意味を持つのは、実際に〝執行〟が具体化する段階に入ってからである。
 空港会社は「強制的手段の放棄」は1994年の円卓会議のことであって、口頭弁論終結後のことではないと弱々しく主張するが、その主張は打ち砕かれた。

第2 小泉よねさん問題の和解解決
 口頭弁論終結後に発生した第2の事実は、小泉よねさん問題の和解解決である。
 被告空港会社(空港公団)は、成田空港シンポジウムと円卓会議において「あらゆる意味において強制手段はとらない」ことを地元農家と日本社会に公約した。さらに、2003年には黒野総裁が東峰部落あて書簡で再度確認した。その後、よねさんに対する強制代執行(過酷執行)について、2015年5月21日に小泉英政さんとの間で和解が確定した。ここでも「よねさん問題のような不幸な出来事を繰り返さない」として「強制的手段の放棄」が確認された。これは2015年3月4日の口頭弁論終結後のことである。
 市東さんに対する強制執行は、これらの公約に反して信義則に反する権利濫用である。

第3 離作補償の不払い
 第3の事実は、離作補償不払いの事実。千葉県知事は、農地賃貸借の解約を許可するにあたって離作補償の支払いを条件とした。しかし、空港会社は珍妙な「二重払い論」(市東さんが明け渡さないうちに補償金を支払えば農業利益と補償金の両方を得ることになる)をたてにして支払おうとしない。口頭弁論終結から現在に至るまで支払わずにいるが、これは言わば、日々、不作為を更新しているのである。

第4 第3滑走路建設等の「空港機能強化策」
 口頭弁論終結後の第4の事実は、第3滑走路建設計画とB滑走路延伸計画(2016年9月27日提示)など「空港機能強化策」の新事実。さらに2017年7月15日には、オーバーランから東峰の集落にあわや激突寸前の重大インシデントを引き起こしている。「空港機能強化策」は市東さんを始め東峰地区や近隣住民の生活をさらに侵害する新事態であり、7・15の重大インシデントは、これまで懸念されたことが現実に発生したという点で、決定的な意味をもつ。

|

圧巻の最終弁論  9・27請求異議裁判報告(1)

_tr  27日の最終弁論は、始めに市東孝雄さんの陳述で始まった。

 ●あくまでも畑を耕し、絶対に動かない
                ──市東孝雄さん
 市東さんは冒頭、「自分の仕事と農地に誇りをもって生きてきた」と述べた。野菜づくりの方法には完成がなく、試行錯誤しながら土壌を作り、日々の工夫と努力の積み重ねによるしかないと語り、「天神峰と南台の農地はそうしてできた私にとっての命です」と訴えた。
 この市東さんに対して、空港会社は農地を〝只の土地〟だと考え、カネを積むから出て行けという姿勢。事実をねじ曲げて空港会社を勝たせてくれた多見谷判決と同様に、裁判所に任せておけば大丈夫だという態度だと弾劾した。
 強制執行は市東さんが耕す農地の7割以上にのぼる。「そのすべてが畑で育つ野菜と一緒につぶされます。祖父の代からの汗と涙、これまでの努力が重機の下に押しつぶされ、二度と野菜ができないと思うと、悔しくて涙が出る」「私に対する強制執行と、よねさんに対する代執行とのどこが違うのか」と訴えた。
 そして「二年間にわたる弁論と証言、補佐人の陳述で、権利濫用は完全に明らかにされたと信じている」と述べた上で、その審理に踏まえるはずの「裁判長の判決いかんで、四十七年前のよねさんに対する代執行と同じ地点に自分は立たされる」と高瀬裁判長に迫り、次のように決意を述べた。

 「私はあくまでも天神峰と南台で私の畑を耕し、絶対に動かない」

 そして最後に、「農地取り上げの強制執行は認めない、との判決を強く求めます」と訴えた。
 堂々とした最終陳述に、傍聴席は感動に包まれ大きな拍手が送られました。

 ●憲法違反の権利濫用・過酷(苛酷)執行 ──内藤補佐人
 続いて陳述した内藤光博補佐人は、まず端的に陳述の主旨を述べた。
 「市東さんの農地に対する強制執行は、生存権的財産権および営農権を侵害し、人間としての尊厳を踏みにじる過酷執行であって憲法に違反し、許されない」
 そして民事執行手続における「公平な執行」の原則をあげて、「法は債務者(市東さん)と債権者(空港会社)の利益を公平に考えており、債務者が不当な不利益を受けることがないように配慮」すべきで、「まる裸にするような過酷な執行は許されない」と陳述した。
 さらに、先の陳述で示した「権利濫用の5類型」に、市東さんに対する強制執行のすべてが当てはまることを具体的に指摘するとともに、その本質的な問題について以下のように述べた。
 なによりも、市東さんに対する強制執行には「二重の意味で権利濫用(過酷執行性)」があること。①公約違反による執行がもたらす小泉よねさん事件との同質性、②耕作地の73%を取り上げることによる「営農権」「生存的財産権」の侵害。その二重性である。
 また、その過酷執行にも「現在」と「将来」にわたるものとの二つがあると指摘した。一つは、農地と生産手段など生存の基盤そのものの収奪(現在の人権侵害性)。二つ目は、精魂込めて打ち込む有機農業と生きる意欲を奪い取って市東さんの尊厳を侵害すること(将来の人権侵害性)。
 内藤補佐人は最後に、「市東さんの魂というべき農地を根こそぎ奪うことは、よねさん事件とまったく同じで、市東さんに人生を否定し精神的な死をもたらす」「土地収用法に代えて農地法を使うことの悪質性は明らかであり、公式謝罪と公約の放棄は全国民に対する背信行為であって到底容認できない」と結んだ。

 ●農家が生き残る最良かつ先駆的な営農形態 ──石原補佐人
 石原健二補佐人は、冒頭、「前回の陳述からわずか2ヶ月、その間にも日欧EPAや日米首脳会談、コメ政策の転換で農家がより厳しい状況に追い込まれている」と声高に訴えた。矢継ぎ早の対外交渉は、いずれも、自動車など工業製品と引き換えに農産物市場の全面開放を加速させている。
 対外的に、日本のコメはまったく太刀打ちできない。政府は対策として「産直型の流通と販売を奨励しているが、その場合の生産者は認定農業法人、販売相手は卸と企業、企業のための選別政策」だと陳述した。農家は政策の埒外におかれているのだ。
 ここに至る農政のジグザグを、石原補佐人は次のように端的に語っている。
 出発は1961年農業基本法。ここで日本は、それまでの米麦中心の農業から麦・大豆を捨ててアメリカから輸入し、「自立経営農家の育成」「多様な農業振興」を掲げて、畜産、果樹、園芸などを、農家や農業団体の反発を押し倒して推進した。
 しかしこの構造改善事業とともに起きたことは、コメの生産過剰と農産物自由化の流れ。稲作や畜産農家の廃業と果樹、園芸の衰退といった現在の状況は、まさにこのジグザグと食料自給の理念を捨てた際限のない「自由化」によるというのだ。
 石原補佐人は、構造改善事業の一環として進められたシルクコンビナート構想が空港によって中止とされ、国策に揺さぶられた三里塚の農民(青年)たちが、農業つぶしの象徴である空港に反対し、有機農業と産直型協同性を他に先駆けて進めてきたことを改めて明らかにした。その中に生まれた市東さんの農業を、「今の最悪の農業環境のなかで、農家が生き残る最良かつ先駆的な形態」だと高く評価した。
 そして「2009年の農地法改正は耕作者主義を排除し、農地を公共財と位置づけた。これは農地を一般の土地と同様の商品として扱うもの」
「しかし農地を公共財というが、農家にとっては生存権的財産権。先の分からない開発に農地を取られてはならない。即刻、安心して市東さんが農業を続けられるようにすべきです」と訴えた。

 限られた時間のなかで、この裁判の核心を突き出した補佐人の陳述に、傍聴席は大きな拍手で応えた。
 その後、法廷は、弁護団による最終弁論に移った。用意された書面は230ページにわたる膨大なもので、12の論点で構成されている。3時間近い大弁論が行われたが、その詳細は次回のブログで。
 以下に、市東孝雄さんの陳述全文と、内藤、石原両補佐人の陳述要旨を添付します。

 ▼市東孝雄さん最終陳述→「20180927shitou.pdf」をダウンロード
 ▼内藤補佐人陳述要旨→「20180927naitou_blog-X.pdf」をダウンロード
 ▼石原補佐人陳述要旨→「20180927ishihara.pdf」をダウンロード

 *写真は裁判報告会で挨拶する市東孝雄さん

|

判決期日は12月20日です!

 昨日(27日)、千葉地裁民事第5部(高瀬順久裁判長)で、請求異議裁判の最終弁論が行われた。原告・市東孝雄さんが最終陳述を行い、内藤光博、石原健二両補佐人が陳述し、その後、弁護団全員が長時間にわたる最終弁論をおこない結審となった。

 判決期日は、12月20日(木)午後2時。
 裁判の詳報は次回のブログで行います。
 

|

文書開示の大詰め迎え、70分の更新意見  9・3耕作権裁判

 9月3日、千葉地裁民事第2部(内田博久裁判長)で、通算38回目の耕作権裁判が開かれた。この日は、左陪席の交代(遠藤安希歩→瀧澤孝太郎)にともなう弁護団の更新意見。

 賃借地の誤認と偽造文書、関係文書の開示問題が大詰めを迎える節目にあたり、 70分を超える大弁論となった。その項目は以下。
①本件土地の所有権を取得していない
②「同意書」「境界確認書」は偽造文書である
③地主・藤﨑政吉からの聴取結果を精査しても、空港会社の賃借地特定は事実に反する
④一部耕作地の賃借権時効取得
⑤賃借地の位置は、収用裁決申請図等の記載内容からみても原告主張の位置ではない
⑥賃借地特定に関する元永メモの信用性は高い
⑦空港会社は文提命令に基づき墨塗り部分を開示すべき
⑧農地強奪の本件訴訟は、1971年小泉よね氏に対する酷烈きわまる代執行を再び行わんとするものであって、訴権の濫用であって許されない

 前回、内田裁判長は弁護団の厳しい追及の前に訴訟指揮を一転させ、空港会社に対して〝墨塗り文書〟の任意開示を勧告した。追い詰められた空港会社は、6月11日付でほんの一部を開示した。だが、肝心要のところは、「利害関係を有するもの、用地交渉の手法等の記載があり、今後の用地交渉に影響する恐れがある」などとの理屈をつけて、墨塗りのまま隠された。空港会社にとって、この裁判上、よほどまずいことが書かれているに違いない。
 裁判長から、さらに一部の提出要請が出され、弁護団は弁論であらためて全面開示を要求した。

 また、弁護団は南台農地の一部の時効取得を主張しているが、その正当性を、天神峰農地との比較において詳細に論じる書面を提出した。天神峰では契約地以外の土地を市東さんの賃借権時効取得としている。この違いも、この裁判における不可解であり、究明されるべきところである。

 耕作権裁判は、偽造文書と、関係する会社隠匿文書、墨塗り文書の全面開示をめぐって、さらに闘いが続くことになる。

 次回期日は、11月19日(月)、次々回は2月18日(月)。いずれも午前10時30分開廷です。

|

〝空港会社の違法は、権利濫用5類型の全部〟──内藤補佐人が空港会社の違法を直撃 7・17請求異議裁判報告(3)

 「私は陳述において、本件強制執行が、市東氏の営農権を侵害する過酷執行であり、『人間としての尊厳』(憲法13条)を踏みにじる重大な権利侵害であり違憲であることを論証する」──内藤光博補佐人(憲法学)は、冒頭、こう切り出した。

 ここで「過酷執行」とは、権利濫用的で基本的人権を侵害する強制執行のこと。憲法に反するから、してはならない。この核心に踏み込むために、内藤補佐人はまず、農を営む権利としての「営農権」保障を憲法の中に求めた。
 なによりも憲法前文にある平和的生存権。「……われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
 そして25条の生存権。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」
 「恐怖と欠乏」「健康で文化的な最低限度」のいずれにおいても、食料生産のための農業(営農)の存在が大前提。内藤補佐人は、農業および営農が人間の生存と平和構築に不可欠であり、高い憲法的価値を有するものだと論述した。
 そして、
 「たしかに日本国憲法に「農業」の言葉はなく、世界の憲法を見てもそれは少ない。だがスイス連邦憲法104条(農業)の強化改正や、フランスの農業法案、韓国憲法改正法案では、主に「食糧安保」や「農業の多面的機能」「公益的価値」の視点から、農業の憲法的価値を明らかにして、憲法による農業保護を規定している」
 内藤補佐人は、このように最新の状況を詳しく紹介するとともに、補佐人が「営農権」として提唱する新たな権利について話し始めた。

続きを読む "〝空港会社の違法は、権利濫用5類型の全部〟──内藤補佐人が空港会社の違法を直撃 7・17請求異議裁判報告(3)"

|

〝空港会社の暴挙に対して、義憤にかられてこの場に立った〟    石原健二補佐人  7・17請求異議裁判報告(2)

 補佐人として証言台に立った石原健二氏(元立教大学教授)は、冒頭、自身のかつての三里塚体験(農業に希望を抱いた青年たちと、その中の一人の自殺)を話した上で、「戦地からの帰還の遅れから残存小作地の扱いにされ、市東さんの合意なく売買して取り上げるとは、公的機関としては考えられない暴挙。義憤にかられてこの場に立った」と言って陳述を始めた。
 いま、日本の農業は存続できるかどうかの瀬戸際にあり、市東さんの農業はその中で生き残る一つの示唆を与えていると訴えた。

・日本農業のかつてない危機
 石原氏はかつてない日本農業の危機的姿についてメモも見ないで詳細な数字を上げていく。
 2018年、食料自給率37%。農業生産額は11.5兆円(90年)から2015年8.8兆円と5年で3兆円近く減額した。農家戸数は1990年の297万戸から2017年125万戸にまで激減。他方、企業の農業参入は2016年2676社と激増している。
 農地面積は1961年の607万ヘクタールから2017年444万ヘクタールにまで下がり、国の言う安全水準をとっくに超えて下がり続けている。
 三里塚を中心とする北総台地は、岩手北部、鹿児島、北海道とならぶ優良農業地帯であり、農業構造改善事業の一環としてシルクコンビナートを誘致したが空港によってつぶされた。空港が農業をつぶした証拠をあげれば、空港設置の1966年に1,520戸あった専業農家は、開港の1970年にはわずかに314戸と、5分の1にまで激減している。

続きを読む "〝空港会社の暴挙に対して、義憤にかられてこの場に立った〟    石原健二補佐人  7・17請求異議裁判報告(2)"

|

裁判所に迫る圧倒的な説得力!  石原・内藤両補佐人が意見陳述  7・17請求異議裁判報告(1)

20180717s_2  昨日(17日)午後、請求異議の第8回裁判が開かれ、石原健二氏と内藤光博教授が、農業経済学と憲法学の立場から意見をのべた。裁判長に着席を促されたが起立したまま、それぞれおよそ1時間30分近くにわたってふるわれた熱弁は、圧倒的な迫力と説得力をもって法廷を席巻し、終わると大きく長い拍手が響きわたった。

 石原氏は、有機農業と産直型協同性(提携)を進化させてきた市東さんの農業が、危機に貧する日本農業においてたいへん意義深く、再生の方向を示唆するものであることを、詳しい農業指標と、世界の動向から論証し、これを潰そうとする空港会社の強制執行を、人間社会に対する敵対であり権利濫用であるからやめるべきだと訴えた。
 内藤教授は、強制執行は執行時の農地・生産手段の破壊にとどまらず、その後においても市東さんの誇りと生きる希望を奪い続けることから「二重の意味での過酷執行」、権利濫用であると論断した。また、「営農権」を憲法的人権に位置づけるべきとの理論を展開し、スイスや韓国の憲法における農業条項と、フランスを含めてその強化に向かう最新の動向を紹介して、この裁判の意義を明らかにした。
 空港会社の強制執行が、学説上、権利濫用の五つの類型に、ことごとく当てはまるという指摘では、空港会社は顔面蒼白。傍聴席からは失笑ととともに怒りが交錯する声が上がった。

 公開の法廷における陳述は、やはり圧倒的である。傍聴したすべての人がこのことを、感動をもって実感した。
 両補佐人の陳述を受けて、弁護団が次々に最終弁論に向かうエッセンスを述べ、次回(9月27日)に最終弁論の全体と市東孝雄さんによる最終意見陳述を確認し閉廷した。
 石原・内藤両補佐人による陳述の詳細は次回。

|

9月27日に最終弁論! 弁護団主張の通り決着  請求異議進行協議(7/9)

 本日、千葉地裁で請求異議裁判の進行協議が行われ、最終弁論の期日を9月27日(木)午後とすることが決定されました。前回、高瀬裁判長との間で物別れに終わった協議は、弁護団の粘り強い闘いで、その主張通り、補佐人陳述とは別の日に弁論期日を設けることで決着しました。

 この結果、請求異議裁判の進行は以下のとおりとなります。

 ・7月17日(火)午後2時
   石原健二、内藤光博両補佐人による陳述(各1時間程度)
   その後、弁護団による弁論(最終弁論概要)
 ・9月27日(木)午後
   弁護団の最終弁論と市東孝雄さんの最終陳述
   (開廷時間は7月17日に決めます)
    したがって、この日が口頭弁論終結予定となります。

|

注目の石原・内藤証人尋問  高瀬裁判長が「補佐人意見」を口述する折衷案を提示  請求異議裁判進行協議(7月3日)

 3日午後、千葉地裁で、市東さんと弁護団が強く要求している専門家証言についての進行協議が行われた。高瀬裁判長は証人による「証言」ではなく、「補佐人」として意見を述べる折衷案を提示し、次回期日(7月17日)に最終弁論と併せて行い結審とする旨、述べた。
 最終弁論を別期日に入れるよう求める弁護団と折り合えず、結論のでないまま協議は終了した。
 以下は、進行協議を終えた弁護団の報告。

・弁護団としては、石原健二証人と内藤光博証人の2名にあえて絞って、専門家証人の採用を求めた。
・これに対して高瀬裁判長は、専門家の証言を不要とすることに変わりはないが、強い要望があるので、折衷案として「補佐人」の立場で法廷で意見を述べていただくということでいかがかとの異例の提案を行った。
・弁護団は納得できない部分もあるとしながらもがこれを受け、最終弁論を別期日に設定するよう要望した。
・ところが、高瀬裁判長は、7月17日に補佐人と最終弁論の両方をやり、この日に結審とする意向を変えず膠着した。
・弁護団は、裁判長に再考を促して協議を終えた。

〔補佐人〕
 民事訴訟において,裁判所の許可を得て当事者または訴訟代理人とともに口頭弁論期日に出頭し,自己の有する専門的,技術的知識によって,その弁論を補助する者をいう。 一種の代理人であるとされている。
 したがって、証人に対するような尋問はおこなわず、意見書をもとにして意見を口頭で述べることになる。

|

より以前の記事一覧