シンポジウム

大きく「間違っている」のじゃないか! ──請求異議控訴審11・9シンポジウム 報告(4)

 最後は、事務局から閉会のあいさつ。シンポジウムの率直なまとめを、抜粋し掲載します。

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 弁護団の総力を結集した膨大な控訴理由書からは、法理論にとどまらない、人としてあるべき声が聞き取れます。この姿勢、行動こそが、極めて困難な異例の裁判を継続させている原動力だと思います。
 そして市東さんの農地をめぐる一連の裁判は、農業と農民の権利についての新しい地平を拓いてきました。
 しかしながら日本の司法・裁判所をえぐり出し遠藤先生のお話は衝撃でした。でもそのお話は、私たちがさらに闘うことの意義を改めて確認させるものだと思います。
 困難な状況の中でも市東さんは、天神峰の大地にどっしりと足をつけて、前を向いています。その姿に私たちは励まされます。
 今日は残念ながら参加されなかった石原先生が、「産直」の取り組みを「衰退する日本農業の再生の道」とおっしゃっています。小川浩さんの報告は、農家の立場からこの闘いの大切さを教えています。

 30年前の今日、ベルリのン壁が崩れました。歴史が動いた日です。世界は新たな希望の時代に向かうかと思われたのに、今、世界中で格差と貧困が拡がり、不寛容がはびこっています。でも歴史は動くのです。あきらめずに運動を継続していけば必ず時代は巡ってきます。沖縄の闘いは大きな指針です。安治富さんのお話から大きな力をもらいました。
 決してあきらめず、粘り強く、市東さんを先頭に、不正義で理不尽な権力と闘っていきましょう。そして必ず勝利しましょう!

 次回の公判は1月16日。請求異議裁判は1回1回が勝負です。大きく結集して裁判所に訴えて行きましょう。正義を為せと!

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大きく「間違っている」のじゃないか! ──請求異議控訴審11・9シンポジウム 報告(3)

 今年は弁護団から、司法制度の歴史に詳しい遠藤弁護士に講演をお願いしました。
 真相を究明しようとせず、空港会社に肩入れし、審理を尽くさないまま不当判決、──あまりに偏った訴訟指揮! 裁判を傍聴する人びとの率直な感想です。「裁判所の門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」(『絶望の裁判所』瀬木比呂志著)の言葉は、いったいなぜなのか? 講演をお願いするにあたって問いかけたこの疑問に対して、遠藤弁護士は冒頭、次のように話しました。
「結論から言うと、三権分立は支配秩序のひとつの形態。司法・立法・行政の三権は分立ではなく一体であって、単に役割を分担しているにすぎない。幻想をもってはいけない」「以上、終わり」と笑いを誘い、硬い話の前に場を和ませて、ますますひどくなる「司法反動化」の歴史について、象徴的な事件を挙げて5点に整理して話しました。
①1947年 戦後憲法制定と司法権の独立。公平な裁判所の理念(憲法37条)
②1959年 砂川事件における進歩的な伊達判決──国による跳躍上告と破棄差し戻し。
 田中耕太郎裁判長と駐日外交官との会談と情報漏洩。
③1967年 良心的裁判官への転向強要と思想統制の強化
 青法協(青年法律家協会)裁判官へのブルーパージ、最高裁裁判官の「血の入れ替え」
④最高裁事務総局の肥大化と人事支配
 良心的裁判官の放逐、移動統制。法令解釈の統制。具体的に原発差し止め判決に対する露骨な人事。農地裁判では、多見谷(その後、沖縄で国側勝訴判決)、高裁の小林は福岡高裁所長に。右陪席の定塚は法務省訟務局移り、沖縄で国を勝たせる役割を果たした。
⑤1999年 司法改革による「抵抗勢力」叩き。日弁連の屈服・翼賛化
 審理期間の半減化、労働事件の短縮化、裁判迅速化法(2年)、弁護士増員、刑事司法大改悪(裁判員制度、訴訟指揮権強化、新捜査手法)、下級裁判所裁判官指諮問委員会。

 詳しく明かされる戦後司法行政の反動化の流れに、会場から驚きの声。
 遠藤弁護士は、「三権分立は幻想。政治部門とともに、司法は支配秩序を支える「公共性の空間」であって、判決は科学的分析を拒否した一方的な価値判断に基づく」と述べました。
「そのための人事は最高裁事務総局に握られており、人事支配の実態は退官した裁判官が書いている」と述べるとともに、請求異議裁判の一審・高瀬裁判長が、「私は小役人ですから」などどと、進行協議の場で平気で口にするほどであると話しました。
 市東さんの農地をはじめとする三里塚裁判、原発をはじめ各種の住民訴訟や冤罪事件などは、その支配構造との闘いであることが明らかされました。

 そして遠藤弁護士は、「まず、この状況のもとで闘われていること自体に大きな意義がある」ことを確認。さらに、「三里塚の裁判は決して負けていない。司法権力・資本の意思を打ち砕くものとして闘われ、いまや異例中の異例の請求異議裁判にまで来た」と訴えました。
 「なによりも司法権力の意思を打ち破っている。裁判の迅速化と争点整理・集中審理方式を打ち破り、徹底して証人採用を勝ち取ってきた。民事執行を停止させて異例の請求異議裁判を開かせ執行を停止させ、一審二年、証言と補佐人陳述を勝ち取ってきた。こういう闘いを現にやっている」
 これは、裁判闘争・傍聴闘争、そして現地の闘いと車の両輪となることで実現できたと述べ、「闘わなければただちに負ける。闘うことによって開かれる」と述べて支援を訴えました。

 講演に続いて、葉山弁護士が市東さんの裁判の現段階を報告。さらに11月7日に行われた成田空港の基本計画変更申請(第3滑走路の新設とB滑走路の延長)について、その問題性・違法性を明らかにしました。最後に大口弁護士が、弁護団としての決意を表明しました。
 不屈に闘う弁護団の奮闘に、あらためて会場から大きな拍手が送られました。

 シンポジウムは最後に事務局から纏めと閉会の挨拶。これについては次回。
 

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大きく「間違っている」のじゃないか! ──請求異議控訴審11・9シンポジウム 報告(2)

Shio_tr  休憩の後、稲作農家の小川浩さんから、厳しさを増す農業現場の報告を受けました。
 台風15号では、機械が故障して3万羽の鶏が死んだ農業仲間があったという。ハウスや畜舎が倒壊して、廃業や規模縮小を考える農家が生まれている。
 だが、
「今回の台風に限らず、今、農業は崩壊の危機に立っている。私の集落は50戸あるが、今や専業農家は3戸だけ」「かつては出稼ぎや兼業で農地を守ってきたがそれもできなくなっている」と話しました。
「ここ5年で農業人口が76万人減り、農家収入も減っている。安倍は『8割の農地を担い手に集中させる』と言うが、政権が思うようには進まない。中山間のように条件が悪ければ借りる人はいない」
「TPP、日欧EPA、日米FTAとやってきて輸入農産物が広がれば、日本の農業はどうなるのか。いまや食料自給率は37%に落ち込んだ」
 そして、貿易協定を見越して食の安全の規制緩和がなされている現実について、アメリカの現実を紹介した。遺伝子組み換えや異蛆虫やハエの卵、カビなど異物混入の事例に会場も驚きの声。「日本の農家がダメになれば、知らないうちこうなる。農業危機は食料危機」「農業は命にかかわる食料生産だから農民だけの問題ではない」と訴えました。
 最後に、「市東さんが農地を守る姿は、日本の農家にあるべき姿を示していると思う」と称え、支援を呼びかけました。
 小川さんの報告は廃業に向けられる農家の現実をリアルに伝えるとともに、農業を守ることの大切さを教えており、会場は拍手で応えました。
 その後、市東さんとともに壇上で質疑の時間(上に写真)。小川さんらが主催した農業問題研究会の活動や、太陽光によるソーラー・シェアリングなど、多彩な質問に応えました。
「父・東市さんが生きていたら、今の市東さんになんと言うだろう? 継いでくれてありがとう?」という孝雄さんへの質問には、
「ありがとうとは言わないだとうけど…、まあ、頑張れくらいかな」と笑いながら対応する場面も。

▼沖縄現地から安次富浩さん
 続いて沖縄現地の報告を安次富浩さん。
「2004年の4月19日に辺野古にテント張って、今日で5,683日。ゲート前にもテント作って1,952日目。あきらめません。これが沖縄の闘い」と切り出して、「米軍植民地支配27年間闘い続けて日本復帰を勝ち取った。平和憲法のもとに戻ると思ったが、幻想だった。この国は民主主義国家ではない。復帰から47年、政府はメキシコに対するトランプのように、本土と沖縄の間に壁を作っている。米軍と戦い、この日本政府と戦っている」と話しました。
 そして、尖閣列島問題を口実とした与那国、石垣、宮古、奄美、徳之島への自衛隊の配備強化、SACO合意違反のパラシュート降下訓練や、戦闘機の墜落事故、米軍規律の乱れなどについて報告し、問題にしない日本政府を批判しました。また、埋め立てがどんどん進むというNHK報道、「辺野古から」というタイトルで「辺野古区民 対 沖縄県民のたたかい」などと誤ったメッセージを送る報道姿勢など、側面からの圧力があることを明かしました。

「埋め立てが始まって1年になるが、工事は全体計画のわずか2パーセント。海面から3メートルの護岸を作って辺野古側を埋め立てている。本来は大浦湾側が、埋め立て計画の第一段階。それができないのは軟弱地盤と2本の活断層。これがバレた。日本の技術では対応できない」と現状を報告。
「われわれは決してあきらめない。知事選では団結して勝った。県民投票でも各種の選挙でも民意が現れた。県外にも、国際社会にも訴える。みなさんは沖縄に来ることも大事だが、ヤマトで安倍政権との闘いを頑張って欲しい。あきらめない、粘り強いたたかいで連帯してこの国を変えよう!」と力を込めました。最後に、焼失した首里城再建への支援を訴えました。

 このあと、弁護団の講演と裁判報告へ。その報告は次回に。

 

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請求異議控訴審 シンポジウムを開催 11・9 文京区民センター

 11月9日午後、文京区民センターで「おかしくないか? 大きく「間違っている」のじゃないか!」をテーマとするシンポジウムが開かれました。いまやあらゆる場面で見られる理不尽な社会矛盾を念頭に、控訴審に入った市東さんの農地裁判について考えを深める企画。100名を超える人々が集まり、市東さんへのロングインタビューと農業現場からの報告から多くのことを知らされました。
 さらに、弁護団の講演と裁判報告・決意では、反動化を進める司法制度の歴史を学び、これと闘う農地・三里塚裁判闘争の意義を深めるものとなりました。沖縄・辺野古から安次富浩さんが特別報告。「絶対にあきらめない」闘いを呼びかけ勇気をもらいました。
 詳細は追って。下の写真は、スクリーンを背に、市東さんの思いをお聞きしたインタビューと会場風景です。
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