最終弁論ONE POINT

最終弁論ONE POINT⑯ 仮執行宣言と弁論結語  ~第5部 第16章、17章~

「われわれは、『国策としての成田空港』という電場・磁場のバイアスを、裁判所がはねのけ、真に正義・公平という、法の原点に立ちきった裁判がなされるという至極当然のことを期待・要求している」
「多見谷裁判長と陪席裁判官が『国策』と虚偽の『公共性』にとらわれることなく、厳正な事実認定に基づく判断がなされることを求めて最終弁論の結語とする」
  ──第17章「結語」から 193頁、198頁

 農地裁判の弁護団は、最終弁論の最後をこのようにしめくくっています。ここでいう「電場・磁場のバイアス」とは、裁判官のなかに根強くある「ナリタは特別」の意識のこと。これまで成田関連の裁判は、原発と同様に、初めに結論ありきの法廷が続いてきました。
 市東さんの裁判でも、元運輸省成田空港課長・石指証人の尋問が異例のビデオリンクでなされるなど、偏った訴訟指揮が行われてきたことは否めない事実です。

 3・11の大震災と福島第1原発の爆発は、「国策」が支配する原発裁判の現実を突き出して、それがもはや私たちの社会では許されないことを明らかにしました。
 弁護団は、国策にへつらうことなく厳正に判断すべきことを多見谷裁判長(千葉地裁民事第3部)に迫ったのです。

 この意味からも、確定判決を待たずに、一審の不当判決でただちに農地明け渡しの強制執行を可能にする「仮執行宣言」は、絶対になされるべきでなく、空港会社においてもこれを即刻取り下げることを、最終弁論は求めています(第16章「仮執行宣言について」)

 明け渡し対象農地の誤認が別件裁判で明らかになったにもかかわらず、多見谷裁判長は審理再開を拒否し判決を強行しようとしています。

 判決期日は7月29日(月)です。
 多くのみなさんが集まられるよう、強く訴えます。

 ※最終弁論ONE POINTは今回をもって終了します。お読みいただきありがとうございました。
   なお引き続き、「鎌倉鑑定意見書」と「石原鑑定意見書」を紹介しますので、ご一読ください。

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最終弁論ONE POINT⑮  最終第5部 「訴権の濫用」 ~13、14、15章~

Mokuji 「本件訴訟は、訴権を濫用するものであって違法無効であるから却下されるべきである」
 ──第13章「訴権の濫用」から 171頁

 空港会社は、市東さんから農地を取り上げるために裁判制度を悪用しています。これは訴権の濫用であるから即刻却下されるべきなのです。
 この農地裁判のいちばんの問題、──それは効力を失った土地収用法(注)に替えて、本来農地と農民の権利を守るために制定された農地法を悪用して農地を暴力的に取り上げることの違憲・違法です。

 最終の第5部はもう一度最終弁論の最初(第1部第1章)で明らかにしたこの問題を、訴権の濫用として主張し、空港会社による違憲・違法の訴訟がなされる背景を明らかにしています。
 すなわち
 ・市東さんと東峰地区に対する苛烈な営農と生活破壊(第14章)
 ・野放図で際限のない空港拡張(第15章)

注:「効力を失った土地収用法」
 土地収用の根拠となる事業認定が期限切れで失効し、空港公団は1993年6月16日に収用裁決(権利取得裁決・明け渡し裁決)申請を取り下げた

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最終弁論ONE POINT⑭  買収後15年間放置! 空港会社には解約許可を求める権利がない  ~第4部 第12章~

 農地を農地以外のものに転用するために取得した場合には、すみやかに転用手続きをとらなければなりません。(農地法83条の2)
 市町村の農業委員会によっては、1年以内に転用される場合でなければ許可しないことを定めているほどです。これは「1年ルール」と言われる農地を有効に使うための決めごとです。

 ところが市東さんの農地については、空港会社が地主の藤﨑政吉氏から違法に買収してから、なんと15年以上にわたって、空港への転用工事どころか、市東さんとの契約解除の許可申請さえも行わず、放置されてきたのです。

 「本件土地取得は、1年を遥かに超える時の経過により無効になり、土地の取得を他者に主張できなくなっている。原告成田空港が農地法20条1項の解約許可申請を行うことはできない。(千葉県知事の)解約許可は無効である」
 ──最終準備書面 169頁
 最終弁論は明快に論じています。

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最終弁論ONE POINT⑬ 畑の場所が間違っている! 「南台41-9」問題  ~第4部 第11章~

Minamidai_1_2  第4部第11章は、いわゆる「南台41-9」問題です。
 市東さんの農地裁判は、空港会社による「土地明け渡し請求」訴訟ですが、その大前提である土地の位置を、空港会社は間違っているのです。
 農業委員会への申請段階から市東さんが一貫して問題とし、今も別件インカメラ提出文書で誤認を示す新証拠が明らかになった大問題が、この章のテーマです。

 右の図は、市東さんが耕作する南台の畑の航空写真です。
 空港会社が明け渡しを請求してきたのは、黄色の線で囲った2か所(BとE1)の土地です。
 しかし、市東家はその内のE1(南台41-9)を一度も耕したことがありません。市東家が地主の藤﨑正吉氏と賃貸借契約を結び耕作してきたのは、BとAの土地です。

「被告市東が耕作する南台の土地を不可分一体の土地と捉えて解約許可を申し立て、被告千葉県も同じくこれらの土地を不可分一体の土地と捉えて解約許可を与えている。
 一部とはいえ解約許可がない以上、全体が不可分一体であるから、本件解約許可は全体として無効」
 ──第11章「偽造文書を使用した土地特定の誤り」から 140頁

 「南台41-9」問題は、まさに裁判全体を覆す梃子の支点です。
 空港会社はこの畑の位置を特定するために、なんと偽造文書を作っていたことも、裁判で明らかにされました。
 別件の耕作権裁判(千葉地裁第2部・白石史子裁判長)のもとで、闘われている文書提出命令を求める闘いは、まさにこの部分です。
 ▼右上は南台41番地の耕作関係図

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最終弁論ONE POINT⑫  「著しい手続き違反」 ~第4部 第10章~

Mokuji 「憲法31条の保障は行政手続きにも及ぶ。・・・すなわち、適正な内容の手続きが、一連の行政手続きにおいて履践されなければならない」
 ──第10章「著しい手続き違反」から 127頁

 憲法31条は、「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命若しくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科せられない」と定めています。
 直接には刑事手続きに関するこの条文は、それだけにとどまらず行政手続きにも及ぶことが、最高裁の判例でしめされています。
 いわゆる「成田新法訴訟」で切り開いたこの判断(1992年7月1日)は、市東さんの農地をめぐる農業委員会から千葉県農業会議、知事の決定に至る手続きにおいても、適正になされなければなりません。
 第10章は、この角度から検討して、憲法違反を明らかにしています。



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最終弁論ONE POINT⑪  「デタラメきわまる“離作補償”」  ~第3部 第9章~

Shitoutakumae2 「作業場と農機具置き場、それと育苗ハウス、離れ、それらがすべて、結局農業をやるには不可欠のものが置いてあると、そういう場所ですね。ですからここを取られるということは、本当にもうそこで農業をやるなと、そういう攻撃だと思います」
 ──市東さん本人調書20頁、36頁

 最終弁論第9章は、農地法20条の要件違反のうちの、「離作補償」についてです。

 ここで弁護団は、「もとより被告市東は、補償が低すぎるからもっと出せと主張するものではない」と、その趣旨を明確にしたうえで、原告成田空港、被告千葉県、千葉県知事らの杜撰かつでたらめな「補償」によって、解約許可処分がいささかも正当化できるものではないとの主張を展開しています。
 ▼写真:市東さんの家の前(天神峰)の畑と建物。営農に欠かせない、作業場、農機具置き場、育苗ハウス、離れなどがある。空港会社の請求は、農地とともにこれらのすべてを取り上げるというもの

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最終弁論ONE POINT➉  「つじつま合わせの架空計画 GSE/ULD」置き場  ~第3部 第8章~

Gse_uld_2  空港会社が明け渡しを求めている畑は、天神峰と南台の2カ所ですが、このうち南台の畑は空港の敷地の中から敷地の外に広がっています。
 そして敷地内の用地に係わる暫定滑走路北延伸と誘導路直線化の事業計画自体が違憲・違法であり、転用許可が見込めるものでなかったことを、前回(第7章)、明らかにしました。

 第8章は、南台の畑のうちの敷地外部分。農地にもかかわらず、空港会社は県知事の許可を受けることなく違法に買収したことは第5章(ONE POINT⑦)で紹介しましたが、これを言い逃れようとして、空港会社は架空の事業計画をでっち上げました。それがGSE/ULDと言われる、航空機地上支援ための特殊車両とコンテナ置き場の計画です。
 南台のGSE/ULD計画は、空港敷地外の農地の違法転用に気付いた千葉県当局が、空港会社にすり抜けを示唆したことで急きょ作られたつじつま合わせの計画だったのです。
 このことは、当時空港公団用地部だった戸井健二証人に対する、鋭い追及ですべて明らかにされました。
 南台の敷地外の農地についても、真実の転用計画など一切なかったのであり、空港会社の解約許可申請は20条の解約申請の要件を満たしておらず、千葉県の許可は全体として無効。これが最終弁論第8章で明らかにしたことです。

 ▼図:GSE/ULD関係図。水色のところが南台に計画したとされる特殊車両とコンテナ置き場。空港会社は「最適地」だと主張したが、エプロン(駐機場)から遠く離れており、嘘だということが一目でわかる。2006年申請段階で、GSE/ULDはオレンジ色のところに存在し、その後2012年に拡張された。黄色の部分は現在さらに拡張しようとしているところ。エプロンに隣接させることは、特殊車両の役割と機能からして絶対条件。

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最終弁論ONE POINT➈  「そもそも農地転用のための事業計画が違憲・違法」  ~第3部 第7章~

Kitaenshin 「農地法20条の本件解約許可申請は2006年7月3日になされ、その1週間後の同年7月10日にB´暫定滑走路を北側に320メートル延伸し2500メートル化する変更許可申請がなされているが、この2つの処分の関係について、原告成田空港は密接不可分なものとして主張している。・・・・・・・
 しかし、2006年成田空港施設の変更許可処分は、違憲・違法な処分であり、本件解約許可の理由にはならない。以下、詳述する」
 ──第7章「農地転用事業の違法性」から 88~89頁

 前回紹介したように、空港会社は農地解約のための要件を3点あげ、いずれも満たしていると主張しています。
①農地を農地以外のものにするための具体的な転用計画があること、②計画に確実性があり、転用許可が十分に見込まれること、③賃借人の経営、生計にの状況ならびに離作補償条件

 第7章では、空港会社がよってたつ事業計画(暫定滑走路北延伸と誘導路整備=2006年許可)の問題点を詳細に検討し、上記要件の①②の主張を、壊滅的と言えるほどにうち砕いています。
 ▼平行滑走路の当初計画と、暫定滑走路北延伸の関係図

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最終弁論ONE POINT➇ 「農地法20条の許可要件にことごとく違反」  ~第3部 第6章~

1966_zu 「農地は私の命と一緒なんです。その農地を取られるということは、農業をやめて死ねということです。私はそういう受け止め方をしました。ですから、そのようなことを、はい、わかりましたと、のむことではできません」
 ──第6章「解約処分は農地法20条に違反する」から 71頁

 第3部は、この市東孝雄さんの証言を引用して始めています。
 これまで第2部では、農地法違反のデパートのような空港会社に地権者としての資格はなく、農地解約(農地法20条)の申請者にはなれないことを明らかにしてきましたが、第3部では空港会社が主張する20条の要件(法を適用するための必要条件)という点でも、満たされておらず違憲・違法であることを述べています。

 空港会社があげる要件は以下の3点。
 ➀農地を農地以外のものにするための具体的な転用計画があること
 ➁計画に確実性があり、転用許可が十分に見込まれること
 ➂賃借人の経営、生計の状況ならびに離作補償条件
 冒頭の証言からの引用は、小作耕作の農業経営と生活を困窮させる許可処分の違法性と犯罪性を突き出すためのものでした。
 ▼図:空港予定地周辺図(1966年閣議決定時)

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最終弁論ONE POINT ➆  「“空港の敷地と思えば空港敷地”  窮して居直る空港会社」 ~第2部 第5章~

Shikichigai2  前回まで、空港公団が不在地主であったこと、小作耕作の市東さんに対して無断売買を行ったこと、そのことを告知せず15年間にわたって地代を市東さんからだまし取っていたこと、それらの違法を農業委員会に隠すために地主と示し合わせて登記もしなかったこと、などを紹介しました。

 最終弁論第5章は、一目でわかる空港会社の違法です!
 右の写真図を見てください。問題の南台41の農地は、国が告示した空港敷地(告示区域)の境界線をこえて、敷地外に広がっています。

 農地を農地以外のものに転用する目的で売買するためには、県知事の許可が必要です(農地法第5条)。しかし政府は成田空港だけを特例として、空港敷地にあたる農地については、省令で知事の許可を不要としました(ONE POINT⑤で紹介)。
 このこと自体、省令が法律を破る憲法違反というべきことですが、百歩譲ってこの省令を踏まえた場合でも、敷地外の農地については当然にも知事の許可が必要です。
 ところが空港公団と藤﨑政吉氏は、この手続きをせずに売買しました。

 売買は敷地内外一体として行われたのであって、この違法な売買は敷地内の畑を含めて無効です。地主(賃貸人)としての地位のない空港会社に、農地明け渡しを請求する権利はありません。

 ▼写真図は空港境界線(告示区域)をまたいで広がる南台41の畑

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